完全ワイヤレスイヤホンメーカー5社に聞く「ライバル製品どうですか?」:ガジェットメーカーさんいらっしゃい!

完全ワイヤレスイヤホンメーカー5社に聞く「ライバル製品どうですか?」:ガジェットメーカーさんいらっしゃい!

それぞれのメーカーのこだわりポイントがまるはだか!

カメラメーカー4社が揃い踏みで、自社製品のいいところアピール&他社製品の気になるところをツッコミまくりだった前回の「ガジェットメーカーさんいらっしゃい!」に続いて、今度は完全ワイヤレスイヤホンメーカーの皆さんに集まっていただきましたよ!

オーディオ機器ってトラディショナルスタイル一筋なモノが多いんですけど、完全ワイヤレスイヤホンに関しては話がまるっきり別モノ。ちっこい筐体内に数多のテクノロジーがてんこ盛りなんです。

だからこそ気になるってモンでしょ。僕たちも。意欲作を目の当たりにした他社メーカーのみなさまも。

ということではじまります。いざ!

集まっていただいたのはバング&オルフセン、ジャブラ、ゼンハイザー、JBL、ソニーの皆さま

今回、ギズモード編集部に推しの完全ワイヤレスイヤホンを持ってきていただいたのは、次の5社さまです。

バング&オルフセン(Bang & Olufsen)

デンマークのオーディオブランド。オーディオ技術だけでなく、オーディオ製品のインダストリアルデザインも高く評価されていて、一部の製品はMoMA(ニューヨーク近代美術館)の永久収蔵品にも選ばれています。

ジャブラ(Jabra)

デンマークのGNグループ傘下のブランド。もともとは電信会社として誕生して、2000年代には世界シェアNO.1のヘッドセットメーカーとして知られるようになりました。その技術を生かしてオーディオ分野にも力を入れています。

ゼンハイザー(SENNHEISER)

ドイツの音響機器メーカー。音楽や映画の制作現場で使われるヘッドホンやマイク製品を手掛けていて、特にプロフェッショナルなユーザーからの信頼が厚いです。

JBL

アメリカのハーマンインターナショナル傘下のオーディオブランドで、同傘下にはAKG(アーカーゲー)やharman/kardon(ハーマン・カードン)があります。コンシューマー向けのヘッドホンやイヤホン、スピーカーで幅広いユーザーから人気です。

ソニー(SONY)

ポータブルオーディオでは「ウォークマン」があまりにも有名。コンシューマー向けから高級オーディオまで手掛けていて、最近ではノイズキャンセリング技術でも存在感を見せています。

案の定、各メーカーさんには「イチオシの完全ワイヤレスイヤホンを持ってきてください!」としかお願いしておりません。プレゼンの順番は世界一公平な順番決めツール「ジャンケン」を使って決めました。

さあ、一体どんな座談会になるのでしょうか!

バング&オルフセン「Beoplay E8 2.0」:クオリティ・オブ・ライフを追求した音作りとデザイン

ギズモード・ジャパン編集部(以降ギズ):この企画は2回目なんですけど、すごく緊張するんですよね。本当は開いちゃいけない扉を開くかのような(笑)。では最初にバング&オルフセンの小峰さんからプレゼンをお願いします。

小峰さん(バング&オルフセン):「BeoplayE8 2.0」をご紹介させていただきます。ブラック、限定色のピンク、インディゴブルー、ナチュラル、ライムストーンの5色で、ブラックとインディゴが売れ筋ですがナチュラルやライムストーンも予想を大幅に超えて人気なんですよ。

塚本さん(JBL):意外!

ギズ:おお、みなさん驚いてらっしゃる。たしかにイヤホンってブラックモデルが多く売れる印象ですもんね。

小峰さん(バング&オルフセン):他にはなかなかない色ですからね。

ハードウェアとしてのポイントは3つあります。

まずは音質。バング&オルフセンには社内にサウンドマイスターという音のプロフェッショナルがおりまして、日々音の研究をしています。目指している音の特性としては、原音忠実再生です。一例としてはコンサートホールで聞くクラシックの音を忠実に再現できるようにチューニングしています。

次にデザイン。家具や食器、建築に自動車など様々な分野のデザインを手掛けてきたヤコブ・イェンセンをはじめ、その時代時代のおもしろいインダストリアルデザイナーを迎えて、ある意味自由にデザインしていただいていました。

Beoplay E8 2.0はヤコブ・ワグナーのデザインです。当人に話を聞きますと、耳にしっかりフィットするか。使う中でストレスなく操作ができるか。といったユーティリティーを追求した上で、そこに現れる機能美やデザインのおもしろさの追求を目指したそうです。

最後にクラフツマンシップ。Beoplay E8 2.0の場合はケースに注目していただきたいです。ケースって毎日持ち歩くし、触るし、ある意味一番身近にあるもの。日常の生活の中でストレスなく気持ち良く使うために、高級なカバンに使われるようなレザーを用いたり、加工をしたり、見えないところのアルミをアルマイト処理したりとか、隅々まで作り込んでいます。

ギズ:自社のブランドとしてコアにしている考え方、デザインに対する考え方みたいなのってあるんですか。

小峰さん(バング&オルフセン):バング&オルフセンが一番大事にしているのはクオリティー・オブ・ライフです。音のためのデザインであることを最重視していますが、ヘッドホンだったら当然ファッション的な部分もあるし、ラウドスピーカーだったらインテリアとしての要素が欠かせません。生活の中にデザインを組み込んでいるっていうのが特徴的といえるでしょう。

それであえて外部のデザイナーを迎えることによって、その時代時代のデザインのエッセンスを音響機材に取り入れていくことを90年続けてきました。

ギズ:完全ワイヤレスイヤホンって自由な動きができるとか解放感が売りだと思うのですが、そうなってくるとやっぱり接続安定性の部分が大事かなと。Beoplay E8 2.0はどのようなところがポイントとなりますか。

小峰さん(バング&オルフセン):最初のE8は2017年に発売されましたが、その開発時、機能的に一番の問題だったのはイヤーピース同士の接続が落ちてしまうことでした。そこでサウンドマイスターから、「音がとぎれとぎれになるなら作らないほうがいいんじゃないか?」という話が出たんです。

そこから安定性の高いワイヤレステクノロジーの実現がエンジニアの課題となりました。医療分野に目を向けると電磁波で情報を伝達するNFMI(近距離電磁誘導)技術があったんです。これを完全ワイヤレスイヤホンで使うと、街中でも干渉されないし、イヤーピース同士の接続の切断がなく、採用しました。

ギズ:エンジニアサイドから割り切った答えが出てくるって、なんか信頼感が増しちゃいますね。

ギズ:では答えにくい部分も出てくるかなと思うんですが、バング&オルフセンさんのBeoplay E8 2.0について、ほかのメーカーさんがどう見ているのかっていうのをお伺いしていきたいなと。

小林さん(ゼンハイザー):デザインはちょっとなんていうのか...。ゼンハイザーが自分で言っていいのかわからないんですけど、弊社はドイツのブランドということもあり昔からちょっと頑なでして。それがいいよというお客様の声もすごく多いんです。オーディオファイル(高級オーディオ愛好者)の製品はそれで良くても、バング&オルフセンさんはゼネラルオーディオにおいてここまでデザインに注力して作り込んでいるところがいいですよね。360度方位にきっちり作られていて、欲しくなっちゃいます。

大庭さん(ソニー):個人的な話で言うとバング&オルフセンはすごい大好きで、BeoSound 9000とか、BeoLab 5とかも自宅で使っているんですけど(笑)。そして1つ前のモデルのE8も使わせていただいてまして。

一同:おお〜。

ギズ:こういうのがいいですよね(笑)

大庭さん(ソニー):音を聞いてみるとちゃんとバング&オルフセン然とした音がするっていうか、まさに言われたように原音に忠実で、本当に音源が悪ければそのとおりに聞こえるし、音源が良ければいい音に聞こえるしっていう。すごい素直な出音ですよね。

生活に溶け込んで、かつ邪魔をしない、ある意味BGM的に聞けるような音づくりになってるっていうのは、確固としたブランド哲学だと思うんです。完全ワイヤレスイヤホンでもそこまでやるんだっていうのがすごいと思います。

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Jabra「Elite 65t」「Elite Active 65t」:フラットサウンド&カスタマイズで十人十色な音に

ギズ:では次にJabraさんから製品のご紹介をお願いします。

藤田さん(Jabra):今回はEliteシリーズの「Elite 65t」と「Elite Active 65t」をお持ちしました。

Jabraはバング&オルフセンと同じデンマークのメーカーで、同じ風土で育ちながら、ブランドとしてもここまで違う方向になるんだなっていうのが日々感じるところですね。

JabraはGNグループという企業体の中にありますが、実は通信用の海底ケーブルを敷設していたり、基本的には通信がベースの会社なんです。昔はモールス信号や電話を扱っていて、いかに人と人とのコミュニケーションをサポートするかというところに注力して研究している背景があります。

これまでは補聴器やヘッドセットの分野で、いかに騒がしいところで声を聞き分けるか、いかに聞こえない音をより聞こえるようにするか、というところに気を配って製品やテクノロジーを開発し続けてきました。その技術を、いかに音を楽しむか、通話を楽しむか、という課題に落とし込んでいるのが、もともとオーディオカテゴリーではなかったJabraならではの特徴です。

ギズ:ほかのオーディオメーカーさんと比べてJabraさんは入ってくる角度が違いますね。いわゆる音楽を聞くものとしてのオーディオに対してはどんなふうにお考えですか。

藤田さん(Jabra):完全ワイヤレスイヤホンに関してはきっちりしっかりと作り込まれています。音楽の音は人の声だけじゃないので、ビジネス用ヘッドセットとは異なり会話に特化しているということはもちろんありません。

先日本社に行ってR&Dの施設などを見てきたんですけど、いろんなラボがあってそれぞれの部屋で特化したものの開発を進めているので、すべての要素に対してベストなものを作ろうという方向性になっています。

そういう意味では音がフラットなバランス型なのも我々の研究者のこだわりだと思います。その上でアプリを使ってユーザーが好みのサウンドにカスタマイズできるようにしていて、かなり万能な作りになっていますね。

ギズ:バング&オルフセンさんと生まれは同じだけど個性は違う、というお話もありましたが、Jabraさんがほかとの違いを一番大きく感じるポイントっていうのはどういうところになるんですか。

藤田さん(Jabra):いかに使うストレスを少なくするかに気を配っているところだと思います。多くの方の耳にフィットするデザインで、しっかりとしたドライバーが入っていて、通話も快適。隙のないような作りでバランスを突き詰めているのがJabraらしいところかなと思いますね。

ギズ:バング&オルフセンさんから見て、Jabraさんってどんなふうに感じますか。

小峰さん(バング&オルフセン):すごくいい意味で違いがあるなと思っています。私たちが美大系、Jabraさんは理系みたいな感じがしますね。バング&オルフセンって北欧の、もともとバウハウスの潮流から始まっているので、日常生活の中で、それこそインテリアだったり、ファッションだったり、そういうデザインとかアートっていう面の存在感が大きいです。対照的に、Jabraさんには補聴器などの医学的アプローチがありますよね。

ギズ:ほかのメーカーさんはいかがでしょうか。実際に製品を手に取られてみて。

塚本さん(JBL):なんかすごくケース、コンパクトですね。

藤田さん(Jabra):軽さは突き詰められてますね。あと触った感じのコーティングがかなり心地よいです。持ってて手で遊ばせられるような感じ。これはイヤホン本体も同じで、耳の落ち着きの良さにつながっています。

小林さん(ゼンハイザー):いろんなテクノロジーをどんどん入れていったり、使い勝手に対してもとても身軽。新しいことを取り入れていくスピード感みたいなのを感じます。それはうらやましいなと思いますね。

大庭さん(ソニー):この価格帯かつこのサイズで、4マイクのビームフォーミングやってるとか、そういうところってすごく尖ってていいなと思います。音楽もさることながらコミュニケーションって重要だよねっていうユーザーニーズをちゃんと捉えてるなと感じますね。

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ゼンハイザー「MOMENTUM True Wireless」:ハイエンド機と同じ世界観、同じ歴史あるトーン

ギズ:続いてゼンハイザーさん、お願いします。

完全ワイヤレスイヤホンメーカー5社に聞く「ライバル製品どうですか?」:ガジェットメーカーさんいらっしゃい!

小林さん(ゼンハイザー):去年の12月に初めて出た「MOMENTUM True Wireless」を持ってきました。

ゼンハイザーはいい意味でも悪い意味でもあまり市場をじっくりとは見ていないんですよね。エンジニアファーストで自分たちがつくりたいものを作るところがある。オーディオファイル向けの高い製品ならいいんですけど、こういうゼネラルオーディオにおいてはそうもいってられないじゃないですか。

ですので、タッチパネルなど使い勝手が良いものは一通り採用しています。じゃあ、ほかの製品と何が違うのかというと、やはり音でしょうか。

MOMENTUM True Wirelessを聞いてくれたみなさん、「あ、ゼンハイザーの音だね」って言ってくれるんですよね。ゼンハイザー製品を聞いたことがある方なら分かると思うのですが、製品通して一貫している音の特徴が明確にあります。ただ、それを売り文句に使うことがないのがゼンハイザーという会社なんですが。

ゼンハイザーはマイクもハイエンドなヘッドホンも作っていて、音の入り口から出口までノウハウがある中で、ミュージシャンやエンジニアの人が出したい音っていうのはこういう音だよね、っていうのを理解しているからこそ「ゼンハイザーの音」というのが実現できるのだと思っています。

MOMENTUM True Wirelessの防水性能はIPX4なのですが、これ以上の防水性能をもたせると、ゼンハイザーの音ではなくなってしまう。ノイズキャンセリングも同じです。声とか楽器の質感が違和感が出てしまうため、その分のコストを音質にあてているという商品ですね。

ギズ:アメリカ本国のギズモードのレビュアーが、とあるゼンハイザーのヘッドホンが、現在最高のヘッドホンだ、みたいなレビューを書いたことがあるんです。そのあとにMOMENTUM True Wirelessのレビューを同じ人間が書いたときに、こっちは完全ワイヤレスだしそうはならないだろうと踏んでレビューを始めたらしいんですよ。そしたら予想を裏切られて、いや、こっちも最高の音だっていうすごい評価の高いレビューだったんですよ。

小林さん(ゼンハイザー):こういう一般の製品でどこまでしっかり作り込めるか。機能は一通りあるにしても、カラバリも少なかったり、各社さんが出したずいぶんあとに出してきたりという事実もあります。

音に頑なで、それを守ってるのがいいところです。ただ、ゼンハイザーファンの方からの「待ってました」といううれしい声もあるんですけど、より一般の方にゼンハイザーを知ってもらうのがこれからのゼンハイザーの大切な部分かなとも思っています。

ギズ:みなさんは「MOMENTUM True Wireless」についてどう感じましたか?

大庭さん(ソニー):クラシックを聞いたときの生々しさ、ここを聞かせたいんですっていうゼンハイザーの思いがありありと伝わってくるような音づくりになっているんですよね。これはあまり他社にはない音だなと。600万円のヘッドホン「SENNHEISER HE-1」も聞かせてもらったことありますけど、もう本当、一貫してこの音なんだなっていうのがあるんです。

いまお話を聞いた感じだと、ちょっとBMWっぽいっていうか。ずっとFRでやりますって守り抜いてたけど、最近はトレンドだしFFも作ってみる?みたいな感じがまたドイツ人の粋。でも作ってみたけど僕らの大切にしたいところはここだぜ、がちゃんとあってステキだなって思いました。

藤田さん(Jabra):やはり直球勝負で、ストレートで、ものすごい真っすぐにっていう印象です。曲の音が作られた場所の空気を運んできてくれるような、空間を想像させるような物づくりをされているなっていうのを感じましたね。

ギズ:ちょっと意地悪な質問かもしれないですけど、もっとセールスコピー、キャッチコピーになる情報が欲しいとか思ったりはしないですか。

小林さん(ゼンハイザー):今日も昨日も一昨日も先週も社内で話してたんです。

ギズ:何しゃべったらいい? みたいな?

小林さん(ゼンハイザー):そうです。ゼンハイザーはワードとしてこうだよ、ああだよとか。でもゼンハイザーは、チップがどうこうみたいな詳細を言わないんですよね。個人的な意見ですけど、高い製品はそれでもいいと思う。ただ、こういうゼネラルオーディオに関してはもう少し情報が欲しいですよね(笑)。

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JBL「TUNE 120」:「初めての完全ワイヤレスイヤホン」として選んでほしいリーズナブルプライス

ギズ:次にJBLさん、お願いします。

塚本さん(JBL):「TUNE 120」という新しいシリーズをお持ちしました。JBL製品のハイエンドラインにEVERESTというシリーズがありますが、対してこのTUNEはエントリーシリーズで、お値段はだいたい1万円くらいです。初めての完全ワイヤレスイヤホンとして選んでほしい、という願いがあります。あらゆる世代に男性、女性問わず使っていただきたいというのがこのTUNEシリーズになります。

カラバリはブラック、ホワイト、ピンクとグリーン。実はピンクがよく売れるんです。価格帯が下になればなるほど若い方が買われますし、ご家族でショップに訪れて、そのなかのお子さんが買ってくださるようなことも多いです。

ギズ:こだわりポイントみたいなところってありますか。

塚本さん(JBL):2017年に初代の完全ワイヤレスイヤホン「FREE」を出させていただいたときに、なかなか接続性が苦しかったんです。いろいろな国の電波環境を調べると、東京が一番2.4GHz帯の無線が飛び交っていると。だから次に出すものは、絶対に東京でフィールドテストをしてくれと社内で言いまして。

結果、今発売させていただいている「FREE X」は池袋、新宿、秋葉原などなど、われわれ日本の社員でテストして、オッケーとなったものを販売して、ようやく今ある程度の評価をいただいています。

今回のTUNE 120もFREE X並みの安定性にしてもらわない限り、日本では販売しないと言いました。実はもうちょっと早く発売できたんですけど、そこのレベルに持っていくまでに若干時間が掛かってしまいました。そのぶん接続性には自信があります。

塚本さん(JBL):あとJBLはアメリカのメーカーではあるんですけど、開発はいま深センで行なっています。中国はイヤホンで通話をするニーズが大きいので、ハンズフリー通話のクリアさはかなり突き詰めてつくってます。

ギズ:先ほどもちょっと触れましたけど、完全ワイヤレスイヤホンに接続性って避けて通れない問題ですよね。ほかのメーカーさんも、まだ世に出てない製品をフィールドテストするみたいな機会って結構あったりするんですか。どうですか、バング&オルフセンさん。

小峰さん(バング&オルフセン):あります。JBLさんがおっしゃったように、東京って一番電波が乱立しているところなんですよ。ほかの国のマーケットではなかなかない環境のため、東京はそういう特異性がある環境だと本国のエンジニアにも伝えています。

ギズ:ソニーさんから見てJBLさんってどう感じる存在ですか。ソニーさんも幅広いユーザーに向けた製品体系だと思うのですが。

大庭さん(ソニー):JBLさんは、AKGやHarmanとブランドをすみ分けてらっしゃるじゃないですか。それもあって、JBLさんはユーザーが製品を海に持ち出すとか、スケートやってる人が使う、みたいな、アクティブな感じに僕の中では映っています。ソニーってどちらかというともう少しビジネスとか、スマートに都会で使う、みたいなところがあって対象とする年齢層がちょっと違うようにユーザーには見えているんじゃないかな、とつくり手的には思っていたりします。

ギズ:ゼンハイザーさんはどうですか。

小林さん(ゼンハイザー):自分らの世代からすると、JBLはゴリゴリのオーディオのイメージでした。それがBluetoothスピーカー以降はスピード感を持って、いろいろ変わってきたように感じます。古くからオーディオが好きな人はもうJBLを知ってるし、逆に言うと若い世代の方にJBLってどういうふうに映ってるのかなというのが気になりますね。

塚本さん(JBL):おっしゃるとおり、そこが課題なんですよね。やっぱりご存じいただいてる方は40代、50代の方が多くて。ブランド認知度の調査をすると、JBLって20代の方に全然知られてなくて、そのあたりがTUNEのシリーズで広がるといいなっていう思いもあります。

小林さん(ゼンハイザー):うちとしても一緒です。そこをスピード感持ってやられてるじゃないですか。それが非常にステキと感じます。

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ソニー「WF-1000XM3」:比類なきポテンシャルを持ったノイズキャンセリング機

ギズ:では最後にソニーさん、お願いします。

大庭さん(ソニー):「WF-1000XM3」というモデルをお持ちしました。他社さんとの差別化ポイントでいうと、業界最高クラスのノイズキャンセリング機能を持たせてあります。従来機種のWF-1000X、WF-SP700Nと比較して、ノイズキャンセリングの精度がすさまじくレベルアップしました。

肝となっているのがWH-1000XM3というヘッドホンタイプに搭載していた高音質ノイズキャンセリングプロセッサーです。この根幹技術を完全ワイヤレスイヤホン向けに最適化したQN1eを搭載し、省電力かつ省スペースで高品質なノイズキャンセリングを実現しました。

ギズ:音質に関してはいかがしょうか。

大庭さん(ソニー):音質も追求しています。今のコンピュータ音楽は例えば10Hz以下といった超低音を出すことが可能です。そういった「音楽の造り手」の変化にまできちんと追従しなきゃいけないよねっていう哲学がソニーの中にはあります。それは1,000円台のイヤホンから、30万円のヘッドホンまで。

しかし完全ワイヤレスイヤホンは使えるドライバーのサイズが小さいので難しい。あとノイズキャンセリングってパワーのあるノイズを、パワフルな低域の逆相で消さなきゃいけないので、実は低音の帯域をすごく使うんですね。

そこでQN1eのなかにあるSN比のいいDACとパワフルなアンプが生きます。クリアで見通しのいい音が、かつノイズキャンセリングを感じさせない、ノイズキャンセリング独特のホワイトノイズみたいなのを感じさせない音になっているところは、実はすごく自慢できるポイントになっています。

通勤のときとか、あとちょっとふと見た夕焼けのときとかに、周囲の音がなにも聞こえない中で音楽が聞こえるっていう、映画みたいな体験が本当に日常でできるっておもしろいなと。いろんなところで音楽を楽しむという、ソニーがウォークマンでやりたかったことがまた一段昇華されて実現できるようになっているんじゃないかと思います。

ギズ:多機能モデルということで推しのポイントは多いと思うのですが、ノイズキャンセリング以外に特筆すべきポイントはありますか。

大庭さん(ソニー):接続安定性とレイテンシも意識して開発しました。イヤホンは音楽を聞くためのものなので、音が途切れた瞬間に音楽体験の意味がなくなってしまう。やっぱりそこが大事です。そこで今回、新たにベンダーさんと共同開発した、新しいBluetoothチップセットを搭載し、左右同時通信を実現しました。

レイテンシに関しては、最近、ユーザーの皆さんからよく聞くのが、動画とかのコンテンツを見ているときの音ズレ。TikTokやYouTubeを見る時にイヤホンを使うユーザーさんが増えているので、音ズレを解決する方法としても新しいチップセットと左右同時通信が必要だったんです。

それからハンズフリー通話のニーズが高まってきたので、左右のイヤホンを片方だけでも使えるようになりました。

たぶん、こういうプラットフォーム部分から新しく開発するメーカーさんってなかなかないと思うんですよね。ただそこがソニーの強みというか、スマートフォンもあって、デジカメもあって、様々なセンサーやアンテナ技術なども有している中で、ソニーだからできることをやっていこうっていう風土があるんです。

ギズ:ノイズキャンセリングの要望って、ユーザーさんから受け取ったりするんですか? Jabraさんどうですか。

藤田さん(Jabra):Eliteシリーズはパッシブノイズキャンセリングと呼ばれる、遮断性が非常に強い形状を採用しています。着けた段階でほぼ周囲の音が聞こえないような評価がすごい高いんですよ。

ギズ:そうか、そういう遮音性の高さからくるノイズカットを考えているんですね。バング&オルフセンさんはこの製品、どう思いましたか?

小峰さん(バング&オルフセン):ノイズキャンセリングの技術をこんなにコンパクトなサイズで実現したのがすごいですね。またキャンセリングの性能も素晴らしい。ソニーさんらしい完成度の高さに脱帽です。

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快適に使い続けるために工夫が凝らされたスマホアプリ

ギズ:完全ワイヤレスイヤホンは主にスマートフォンで聞くものですよね。メーカーさんによっては接続・設定アプリにもこだわりがあると思うのですがいかがですか?

大庭さん(ソニー):Jabraさんのアプリがすごくおもしろいですよ。

ギズ:おお、Jabraさん、どんなアプリですか?

藤田さん(Jabra):通勤のとき、オフィスにいるとき、スポーツしてるときといったようにモードが設定可能です。電車に乗ってるときに「ヒアスルー(外音取込)」の設定をオンにすると、音楽も聞こえるけど車内のアナウンスもわかる。オフィスにいったら完全に音を遮断して、例えば雨の音が聞こえたり、波の音が聞こえたりとリラクゼーション効果のあるSEを鳴らすこともできます。ブレークイン(エイジング)に使えるピンクノイズ、ホワイトノイズも入っています。

あとはステップカウンター、つまり歩数計の機能だったり、「Find my Jabra」といってイヤホンを紛失した時に探せる機能だったり、ファームウェアのアップデートもアプリで出来ます。

ギズ:これはJabraさんの立ち位置をめちゃめちゃ表してるアプリですね。ただ音楽聞くだけのものじゃないっていう。

藤田さん(Jabra):音楽再生には使わずに、オフィスで会議、Skypeとかするときにだけ使う人もいたりとか、いろんな使い勝手がありますね。で、操作マニュアルも全部アプリから参照できるようになっています。あとはイヤーピースを追加で買ったりとか、充電ケースをなくしてしまったから買ったりっていうのもアプリからECサイトへアクセスできるようにしています。

大庭さん(ソニー):Eliteシリーズを使ってて一番びっくりしたのがアプリでした。

ギズ:ほかのメーカーさんのアプリはどうですか?

小峰さん(バング&オルフセン):アプリがイヤホンだけではなくスピーカーとも連携するので、自宅に戻ったときにいままで完全ワイヤレスイヤホンで聴いていた曲を、自宅のバング&オルフセンのスピーカーで鳴らす、みたいな操作ができます。その逆も可能です。イコライザは高域や低域を調整するのではなく、「パリッとした音」「重厚感のある音」みたいにユーザーが直感的に調整できるようになっています。

小林さん(ゼンハイザー):ゼンハイザーとしては実用的な部分に振ってます。外音取り込み機能はイヤホンのタッチパネルからも操作できるのですが、それが効かないようにオフにしたりとか。あとはイヤホンを外すと一時停止、装着すると再生再開などの機能をオン・オフできるようになってます。イコライザは曲線を指で操作していただくんですけど、慣れてくると繊細な調整ができますね。

大庭さん(ソニー):外音取り込みモードという音楽を聴きながら周囲の音を取り込むモードに切り替えができます。あと他社さんにないのがアダプティブサウンドコントロールです。スマートフォンの加速度センサーを使って歩行中や電車移動中のノイズキャンセリングの度合いを自動でコントロールするっていう機能もあります。

ギズ:いやぁ、アプリだけ見ても各社さん、全然違いますね。

日本は完全ワイヤレス先進国?

ギズ:ギズモードが日々記事を作っていく中で、完全ワイヤレスイヤホンって読者の方からすごく大きな反響をいただくカテゴリーなんですよ。ハンズオンやレビュー記事をお届けすると、読者のみなさんが非常に細かくコメントしてくれるんです。単純にかっこいいとか欲しいという声もあれば、それこそ音質やフィット感やコーデックの話まで。モノとして評価するポイントが多くて、編集部の中では今一番おもしろいガジェットなんじゃないかと言う者もいるくらいです。 だからこそこの企画をやらせていただいたんですけど。

塚本さん(JBL):日本の市場の話をすると、ヘッドホンのカテゴリーの中で完全ワイヤレスは台数だと20%切るくらいのシェアですが、金額でいうと40%を超えているんです。弊社の認識では、こんな伸び方をしているのは日本だけです。それだけお客様の知識も進んでいると思います。

小峰さん(バング&オルフセン):ちょっとおもしろい話があって。デンマーク本社の人間が日本に来たときに東京の家電量販店に行ったんですが、イヤホンコーナーに展示してあるスペック比較表に驚いていました。コンシューマー向けの表なのにマニアックすぎないか?って。全世界でここまで消費者がスペックに対して知識があるのは日本だけだと。やっぱり家電大国なんだなと、みんなビックリして帰ります。

いっぽうで、スペックだけがすべてじゃないっていう思いがあって。音響心理学などの側面もあっての音だと思っているので、そこはいつもバランスが難しいなと感じています。

ギズ:ある意味こういう企画が成立するのも日本だからこそかもしれないですね。

塚本さん(JBL):本当にそう思います。

音質、テクノロジー、哲学、ぜんぶ詰まっているのが完全ワイヤレスイヤホン

完全ワイヤレスイヤホン、すなわちオーディオ機器。だからでしょうか。最初は音質の話が中心になるかと思っていたんです。

しかしフタをあけてみれば、各社がプッシュしてくれたモデルは機能も性格も全然違う、それぞれ異なる魅力が突出していいて"みんなちがって、みんないい"(by 金子みすゞ)。やあ、これはなんてステキなことだろう。

「カメラメーカーさんいらっしゃい」のときもそうだったんですが、みなさんやっぱりオーディオが大好きなんです。そんなメーカーさんたちのお互いの評価も踏まえると、自分のライフスタイルにマッチしたモデルを選びやすくないですか? この座談会、いいバイヤーズガイドになってる気がする。

さて次回はどんなガジェットのメーカーさんが集まってくれるでしょうか。「このジャンルのメーカーさんの声が聞きたい!」という願いがありましたら、ぜひ教えてくださいね!

ニコン、リコー、キヤノン、ソニーに聞く「ライバル社の製品、どう思ってます?」 :ガジェットメーカーさんいらっしゃい!

伏せ字も覚悟していました。日々、いろいろなガジェットを触っては、あーだこーだ語っているギズモード編集部。ココがいい、ココが悪いなんてことを好き勝手...

https://www.gizmodo.jp/2019/04/nikon-ricoh-canon-sony-camera.html