"Beats Flex-fragment design special edition" is now on sale on Apple's official website
11/03/2022
COSTFOTO/BARCROFT MEDIA/GETTY IMAGES
「修理する権利」を手に入れる道のりは、長く険しい。自分が所有するデヴァイスを自分の好きなやり方で修理することは、いまだにあまりにも困難なのだ。米国ではいくつかの州で法案が提出されて議論が交わされてきたものの、成立したのは1州のみである。アップル製品の「修理しやすさ」は? iPhoneとMacBookをランク付けした結果のちにジョー・バイデンが大統領令を発令し、続いて米連邦取引委員会(FTC)が投票を実施して、修理する権利はいくらか法的実効性を得た。それでも、さほどの具体的成果はまだ生んでいない。完全に泥沼にはまっているのだ。だからこそ、アップルによる「Self Service Repair(セルフ・サーヴィス・リペア)」のプログラムの発表は、かなりの驚きをもって前向きに受け止められている。米国のアップル製品のユーザーは、2022年初めには「iPhone 12」と「iPhone 13」の修理マニュアルを入手できるようになる。続いて「M1」チップを搭載したMacが対応し、ほかの国々でも22年中にはプログラムが適用される。また、新たに設けられる「Apple Self Service Repair Online Store」では、iPhoneのディスプレイやバッテリー、カメラの交換といった一般的な修理に対応できる200種類を超える部品とツールを注文できるようになる。使用済みの部品をリサイクル用に送り返せば、修理部品の購入代金に充当できるクレジットが付与される仕組みだ。
「修理する権利」を長年にわたって阻止しようとしてきたアップルにとって、今回の決定がどれだけ大きな転換であるかは言葉に尽くせないほどである。これまでアップルは、消費者が自分でデヴァイスを修理できるようにすることは、消費者の安全とセキュリティを危険に晒すことになると主張してきた。そして法律や規制と、ことごとく戦ってきたのである。方針転換という意味では、『チャーリーとチョコレート工場』のウィリー・ウォンカが歯磨き粉を販売しようとするようなものだ。「ようやく、といった感じです」と、オンラインの修理コミュニティを運営するiFixitの共同創業者で最高経営責任者(CEO)のカイル・ウィーンズは言う。消費者による修理を実現するために活動してきたウィーンズは、法的措置を講じるとアップルから脅されたことがあるという。「消費者が修理できるようにしてほしいと、わたしたちは18年にわたってアップルに要求してきたのです」修理する権利を求める活動家らは、セルフ・サーヴィス・リペア・ストアを完全な勝利とはみなしていない。実際にどのようなかたちで展開されるかについては、気になる問題が残ると考えているのだ。アップルはすでに、外部の技術者にツールや部品、マニュアルを提供する「独立系修理プロバイダプログラム」を提供している。新しいシステムが同様の形式になるなら、修理に使えるのはアップルから購入した特定の部品だけになり、より安価なサードパーティー製のディスプレイなどは使用できない。アップルは依然として、「大多数のお客さま」は認定技術者に修理を依頼するほうが望ましいとしている。また、多くのデヴァイスは引き続き修理が困難か、あるいは修理が不可能なままである。特に「AirPods」は「“使い捨て”するように設計されている」と、ウィーンズは指摘する。
次ページは:今後のアップル製品は修理性が向上?