「Beats Flex ー fragment designスペシャルエディション」 Apple公式サイトで販売開始
11/03/2022
新型MacBook Proに搭載されたM1 Pro/M1 Maxの構成については別コラムでお届けしたが、では実機でのパフォーマンスは? という部分が気になるところだろう。
すでに出荷が開始されているM1 Pro / M1 Max搭載のMacBook Proだが、おおまかなベンチマークの値はすでに出ている。CPU速度は、Mac Proの上位オプションを除けばMac全体を通じても最上位で、iMac 27インチモデルにIntel Core i9をオプションとして設定した場合よりもGeekbench 5で約4割高速な値を叩き出す。
GPUに関しても16コアのM1 Proが、これまで最上位、しかも高価なオプションであったRadeon Pro 5600Mと同等のスコア(Metalの演算スループット)。M1 Maxの32コアモデルでは、その約2倍となるためデスクトップ向けのRadeon Pro 5700XTも大きく超えてくる。
これらの設計は従来のM1をベースに拡張されているため、ある程度は予想できていたものだが、実際にベンチマークテストを動かしていて驚かされたのは、その安定したパフォーマンスだ。
高性能なだけではなく、負荷の高いときでも本体が過度に加熱したり冷却ファンの騒音に悩まされたりすることもなく、コンスタントに高い性能を発揮してくれる。
そして実際にMacBook Proを使い始めてみると、プロセッサ性能以外の部分、細かな作り込みにiPhone Proシリーズと共通するフィロソフィーがあり、それこそがこの製品に深みをあたえていると感じるようになった。
中でもディスプレイ品質は(こちらも予想されたものではあったが)モバイルコンピュータとしては例のないもので、さらにはプロ向けの評価リファレンスモードも備え、コンテンツ制作時のフリッカー対策も行われている凝ったもの。
極めて複雑かつ大規模に進化した製品だけに、使い始めて1日ほどしか経過していない現在、その全貌は見えてきていないが、まずはファーストインプレッションをお届けしよう。
ややサイズ拡大、厚く、重く、しかしそれ以上に魅力的に
筆者がテストしたのは10CPUコアと16GPUコアを搭載するM1 Proに、16GBメモリと2TB SSDを搭載した14インチディスプレイのモデル。SSD容量は大きいが、それ以外はもっとも典型的な新型MacBook Proの構成だろう。
16インチモデルとディスプレイの画素密度がまったく同じで、それ以外の機能も同一とされているが、2つだけ異なる点がある。
スピーカーのアーキテクチャは同一で音質も可能な限り揃えられているようだが、最大音圧は16インチモデルの方が高い。(ただし14インチでも充分な音圧が出る)
そしてもうひとつはM1 Max選択時のハイパワーモードの有無だ。
16インチにはハイパワーモードがあり、M1 Maxに搭載された32コアのGPUをフルスピードで回す。CPUやNPUなどと同一ダイにあるパワフルなGPUをフルに回すと、熱密度の分散や全体の冷却バジェットに影響し、連続した高負荷時にはパフォーマンスの調整が入ることが予想される。
そのような場合、GPUへの依存性が高いアプリケーションを使う際でもGPUの性能調整を入れないモードのようだ。
おそらくごく一部のアプリケーション、用途でしか必要とはならないと考えられる。また、M1 Proではそうしたモード設定なしにフルスピードを出せるため、設定そのものが存在しない。
これまでMacBook Proの”大きい方”と”小さい方”には、機能や性能に大きな違いがあったが、ここまで近付けば”サイズが違うだけの兄弟”と言えるだろう。
”小さい方”として比べると200グラム以上重くなったことを気にする向きもあるかもしれないが、そうした方は素直に13インチのMacBook Pro、あるいはMacBook Airを使う方がいいかもしれない。新型MacBook Proの魅力は決してパワフルなSoCだけではなく、製品の作り込みにあるからだ。
その緻密な作り込みに共感する、あるいは必要と感じるようそがあるのならば、M1搭載モデルとの比較は意味をなさない。
移動環境、評価環境両面でプロレベルの品質を提供するLiquid Retina XDRディスプレイ
パフォーマンスに関しては、多様なプロセッサが統合されていることもあり、なかなか総合的な評価は難しい。CPUだけならば10コアモデルのIntel搭載iMac 27インチよりも4割前後速く、GPUは16コアモデルでもRadeon Pro 5600M並と強烈だが、そこにNeural EngineやMLアクセラレータ、ISPなどの付加価値が乗ってくる。
アプリケーションごとに異なるプロセッサをどどのように活用し、使いこなしていくかという、従来のIntelアーキテクチャとは異なる複雑な評価が必要になると思う。
しかし、ディスプレイの価値は一目瞭然。
Liquid Retina XDRディスプレイは、Pro Display XDRと同じ輝度のスペックとなっているがローカルディミングの分割数が1000エリアも有る。ピーク輝度こそ異なるものの、Phone 13 Proのディスプレイがそのまま大きくなったようなイメージだ。
この高スペックディスプレイはmacOSのディスプレイ設定で様々な使い方ができる。デフォルトでは「Apple XDR Display」というプリセットが割り当てられ、リフレッシュレートは「Pro Motion」となる。この設定では、内蔵する輝度センサー、色温度センサーと連動し、0-1600nitsの輝度範囲、Display-P3の色域というスペックの中で「MacBook Proが置かれている環境でもっとも見え味の良い」表示に自動調整される。
一方、ディスプレイプリセットには「Apple Display」もある。これは従来のMacBook Proの最大500nitsの輝度スペックに合わせたモードで、これまでの使い方と感覚を同じにしたい場合はこちらを選択すればいい。
そしてこれら以外に用意されているプリセットがリファレンスモード。9種類用意されたプリセットは各種業界標準のディスプレイ特性で、暗室での評価でそれぞれの規格通りになるよう設定できる。
たとえばHDR Video設定にすれば、色再現域はP3いっぱいに使い、ST2084(いわゆるPQカーブ)に合致する輝度特性でHDRコンテンツが表示される。HDTVにすればBt.709の色域に2.2のガンマ特性、全白が100nitsでロールオフされるSDRで表示されるといった具合だ。なお、これらのモードでは輝度調整やTrueToneは無効になる。
つまりコンテンツ制作時に厳密な評価を行う必要がある場合と、様々な場所に移動し、環境が揃わない中でも製作作業を行わねばならない環境、両面で適したモードを切り替えながら作業が行える。
これはリフレッシュレート設定でも同じで、最大120Hzまで自動可変するPro Motionを規定値としながらも、60、50、48Hzといった典型的なリフレッシュレート以外に、59.94、47.95Hzといった放送向けのリフレッシュレートに固定することもできる。これによりどんな作業を行う場合でも、フリッカーフリーの作業環境を得ることができるのだ。
もちろん、ローカルディミングによる黒沈みや暗部階調の良さ、色再現域の広さなども魅力だが、それだけならばiPad Proでも実現されている。新型MacBook Proのプロクリエイター向けたる所以は、こうした細かな作り込み、ディテールに宿っている。
iPhone Proシリーズに通じる”質”へのこだわり
AppleはiPhone Proシリーズをプレミアムなスマートフォンとするため、ディスプレイはもちろん、あの小さなハンドセットから出てくる音の質、空間オーディオ、あるいはカメラ画質などに徹底して拘ってきた。そのこだわりはこの製品にも活かされている。
Magic Keyboardの構造や圧力センサーを使ったガラスカバーのトラックパッドは、フィーリングとしては従来と同じ、1080p対応FaceTime HDカメラは今年発表のiMac 24インチモデルと同等。後者に関してはiPhoneの技術が活かされている。
そして今回、購入したユーザーが驚くであろう成果が内蔵スピーカーだ。6スピーカーシステムによる音は、本当の低域は再生できないものの音楽を楽しむには充分。同時発表された第三世代AirPodsに近い再生帯域で、中低域のパンチやスピードがそこそこある。
おそらく出張先のホテルでは耳を塞ぐヘッドフォンよりもこちらの方が心地良く感じる人が多いだろう。空間オーディオの再現性も高く、Apple TV+を視聴する際にはサラウンド感をたっぷり楽しめるはずだ。
Appleはマイクの品質もスタジオ品質と訴求しているが、現時点でそこまでは評価できていない。しかし、簡単な録音テストでは外部コンデンサーマイクのステレオモードに匹敵する音質であることは確認できた。少なくとも生半可なUSBカメラでの動画キャプチャ、音声キャプチャよりも、ずっと高品位であることは間違いない。
長らく搭載されてこなかったHDMI端子やSDXCが復活したこと、充電端子がMagSafe 3になったことなども魅力だ。
30分で50%という急速充電も行えるなど、今後数年、MacBook Proの基本となるだろう基盤技術が総動員されている。
固定された場所から解放されるパワー
ところで新しいMacBook Proの発表では、英語で「Unleashed」という言葉がキーワードとして設定されていた。”解き放つ”といった意味で、パワーを解き放ったのだと解釈して使っていたが、これまで固定された場所に縛り付けられていたエンジニアやクリエイターを自由な場所でクリエイティブな作業に携われるよう”解き放った”のだとも解釈できると気付いた。
M1 Maxを使えばCinema 4DやOctane Xで、最新ゲームのシーン設計やハリウッド映画クラスのシーンデザインをモバイル環境、それもバッテリ駆動で行えるだろう。音楽製作では、数100どころか1000を超えるトラックを個別にエフェクトをかけ、3D音響デザインを施した上でリアルタイムの演奏が行える。
動画編集に関してもAppleがメディアエンジンと呼んでいる動画アクセラレータを搭載した効果が大きい。実際、M1 MaxではAfterburnerを搭載したMac Proよりも、ProRes RAWの8Kストリームをより多く同時再生(6本に対して7本)できる。M1 Proはメディアエンジンが1基のみ(Maxは2基)だが、4K映像であれば余裕でハンドリングする。
これまでのMacBook Proは、あくまでも「Pro寄りのMacBook」だったが、ここに至ってプロクリエイターをモバイルの世界に解き放ったという印象だ。
これは創作活動をどこでもできるというだけではなく、クライアントとのコミュニケーションや製作部門とプロジェクトを統括する立場の人間など、チームで創作活動する場合にも現場ごとに確認や調整を行えるという点でワークフローを変える存在になるかもしれない。
まだ到着したばかりで、その全貌は評価し切れていない。しかし、Windows PCでも増えているクリエイター向けPCのレベルを引き上げるだけでなく、SoCパフォーマンス以外の点でも新たな基準を作り出した製品になることは間違いなさそうだ。
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