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11/03/2022
中国上空で最近、「未確認飛行物体」(UFO)が増加し、人民解放軍がこれを追跡・分析するため人工知能(AI)を導入しているそうだ。ただ中国の科学者は「宇宙人よりも人間が原因である可能性が高い」とみて、慎重に調査を進めている。
◇目撃情報は幅広く
中国人民解放軍空軍預警学院出身の研究者は、香港の有力英字紙サウスチャイナ・モーニング・ポスト(SCMP)の取材に対し、未確認飛行物体に関連した目撃情報が近年、軍民問わず幅広く寄せられ、人による分析では間に合わない状況になっていると明らかにした。
この研究者は北京で2019年に開かれた情報技術科学者の会議で「この状況は、中国の空の安全保障に厳しい課題を与えている」と報告したという。
その中で明らかにされたのは、軍の特別部隊が未確認飛行物体に関するデータを分析するためにAI技術に頼っているということだった。
AIは既成概念にとらわれない思考ができ、異なる時間・場所でとらえられた多数の断片情報を点検して、人にはわからない関連性を描ける。AIを使った分析によって、その物体が▽敵対する国によるものなのか▽アマチュア航空愛好家によるものなのか▽自然現象なのか▽そのほかの理由によるものなのか――の判断に役立てているという。
一方、未確認飛行物体の増加について、陝西省西安を拠点に活動するレーダー科学者は「宇宙人よりも人間によるものである可能性が高い」と指摘する。その一つが、多様な小型無人機(ドローン)の存在。中国でここ数年、低空飛行に対する規制が緩和され、ドローンも安価となって急激に普及している。このドローンが「未確認飛行物体」としてとらえられているのではないかという見方だ。
もうひとつが、南シナ海を含む中国近海の敏感な場所で活発化する米軍の動き。この状況のなかで「直ちに説明できない物体の出現が増えている」という背景もある、という指摘だ。
◇中国で「唯一、公式的な」確認例も
SCMPによると、中国で「唯一、公式」に未確認飛行物体がとらえられたのは、1998年10月19日、河北省滄州市の空軍基地上空だったそうだ。
当時の報道によると、同日午後11時ごろ、空軍飛行実験訓練センター職員が、キノコのような物体が二つの光線を放ちながら飛んでいるのを目撃。4カ所のレーダー基地でも「軍用機でも民間機でもない飛行物体」が観測されたため、軍は迎撃を指示した。軍用機が追跡したものの、追いつくことができず、物体は高度20,000m以上も上昇した後、目視やレーダーで確認できなくなったという状況だったようだ。
先述の研究者とその同僚によると、人民解放軍には未確認飛行物体への対処に関連して、3段階の報告システムがあるという。
基礎レベル(軍レーダー基地、空軍パイロット、警察、気象台、中国科学院の天文台など)で、可能な限り、生データを収集する。次の段階は、予備的な分析を手掛ける軍の地区司令部が基礎レベルで収集された情報を処理し、国家的なデータベースに送る。
軍中枢はこれらの情報をAIによって分析し、物体の動きや発生頻度、空力設計、放射性物質の状況、素材、その他の情報に基づいて、当該物体の「脅威指数」をはじき出すという流れを取っているそうだ。