ドローンなど未来のサービスを支えるインフラを整備 施政方針演説で岸田首相が表明 | DroneTribune (ドローントリビューン)

ドローンなど未来のサービスを支えるインフラを整備 施政方針演説で岸田首相が表明 | DroneTribune (ドローントリビューン)

 岸田文雄首相は1月17日に召集された第二百八回国会(通常国会)の施政方針演説でドローンについて他のテクノロジーなどともに「整備する」と述べた。首相は、自身が掲げる「新しい資本主義」を構成する成長戦略と分配戦略の両面から言及し、そのうち成長戦略の第一の柱にデジタルを活用した地方の活性化を位置づけた。その中で「デジタル田園都市国家構想」の強力な推進に触れ、「ドローンなど未来のサービスを支えるインフラを整備します」と言い切った。ドローンの活用を前提とした産業保安ルールづくりにも表明し、ドローンが首相の掲げる「新しい資本主義」にとって重要であることを印象付け、ドローンが人々や社会を支えるインフラとして浸透する時代の到来を予感させた。

ドローン、AIなどの活用を前提とした産業保安のルールづくりも表明

 ドローンについては「デジタル田園都市国家構想」について述べた中で言及した。岸田首相は「5G基地局を信号機に併設するなど多様な手法で民間投資を促し、自動運転や、ダイナミックな交通管制、ドローンなど、未来のサービスを支えるインフラを整備します」とドローンをインフラの一環として整備する方針を明言した。

 さらにこれに続けて、デジタルサービスの実装に向けた規制・制度の見直しの中でも、新しいルールを作り暮らしを豊かにする事例として紹介。「例えば、『運転者なし』の自動運転車、低速・小型の自動配送ロボットが公道を走る場合のルールや、ドローン、AIなどの活用を前提とした産業保安のルールを、新たに定めることで、安全を確保しながら、新サービス展開の道を拓きます」などと、ドローン前提社会に触れた。

 演説の中では民主主義の危機、新自由主義の弊害、オンライン診療、文系理系の枠を超えた人材育成、スタートアップ創出元年、大阪・関西万博、賃上げ、人への投資、中間層の維持、カーボンニュートラルなど、ドローン関連産業の中でも使われる言葉がちりばめられた。

 施政方針演説のドローンを含む「新しい資本主義」に関わる発言は以下の通り。

<以下、演説より関連部分を抜粋>

 新型コロナとの闘いに打ち克ち、経済を再生させるため、令和三年度補正予算の早期執行など、危機に対する必要な財政支出は躊躇なく行い、万全を期します。

 経済あっての財政です。経済を立て直し、そして、財政健全化に向けて取り組みます。

 経済再生の要は、「新しい資本主義」の実現です。

 市場に依存し過ぎたことで、公平な分配が行われず生じた、格差や貧困の拡大。市場や競争の効率性を重視し過ぎたことによる、中長期的投資の不足、そして持続可能性の喪失。行き過ぎた集中によって生じた、都市と地方の格差。自然に負荷をかけ過ぎたことによって深刻化した、気候変動問題。分厚い中間層の衰退がもたらした、健全な民主主義の危機。

 世界でこうした問題への危機感が高まっていることを背景に、市場に任せれば全てが上手くいくという、新自由主義的な考え方が生んだ、様々な弊害を乗り越え、持続可能な経済社会の実現に向けた、歴史的スケールでの「経済社会変革」の動きが始まっています。

 私は、成長と分配の好循環による「新しい資本主義」によって、この世界の動きを主導していきます。官と民が全体像を共有し、協働することで、国民一人ひとりが豊かで、生き生きと暮らせる社会を作っていきます。

 日本ならばできる、日本だからできる。共に、この「経済社会変革」に挑戦していこうではありませんか。

 様々な弊害を是正する仕組みを、「成長戦略」と「分配戦略」の両面から、資本主義の中に埋め込み、資本主義がもたらす便益を最大化していきます。

ドローンなど未来のサービスを支えるインフラを整備 施政方針演説で岸田首相が表明 | DroneTribune (ドローントリビューン)

 成長戦略では、「デジタル」、「気候変動」、「経済安全保障」、「科学技術・イノベーション」などの社会課題の解決を図るとともに、これまで、日本の弱みとされてきた分野に、官民の投資を集め、成長のエンジンへと転換していきます。

 分配や格差の問題にも正面から向き合い、次の成長につなげます。こうして、成長と分配の両面から経済を動かし、好循環を生み出すことで、持続可能な経済を作り上げます。

 まずは成長戦略。第一の柱はデジタルを活用した地方の活性化です。

 新しい資本主義の主役は地方です。デジタル田園都市国家構想を強力に推進し、地域の課題解決とともに、地方から全国へと、ボトムアップでの成長を実現していきます。

 そのために、インフラ整備、規制・制度見直し、デジタルサービスの実装を、一体的に動かしていきます。

 高齢化や過疎化などに直面する地方においてこそ、オンライン診療、GIGAスクール、スマート農林水産業などのデジタルサービスを活用できるよう、5G、データセンター、光ファイバーなどのインフラの整備計画を取りまとめます。

 5G基地局を信号機に併設するなど多様な手法で民間投資を促し、自動運転や、ダイナミックな交通管制、ドローンなど、未来のサービスを支えるインフラを整備します。

 デジタルサービスの実装に向けて、規制・制度の見直しを進めます。

 単なる規制緩和ではなく、新しいルールを作ることで、地域社会に新たなサービスを生み出し、日々の暮らしを豊かにすることを目指します。

 例えば、「運転者なし」の自動運転車、低速・小型の自動配送ロボットが公道を走る場合のルールや、ドローン、AIなどの活用を前提とした産業保安のルールを、新たに定めることで、安全を確保しながら、新サービス展開の道を拓きます。

例えば、企業版ふるさと納税のルールを明確化することで、企業の支援による、地方のサテライトオフィス整備の取組を後押しし、企業や個人の都市から地方への流れを加速させます。

 マイナンバーカードは、デジタル社会の安全安心のための「パスポート」であり、その利便性を改善させます。

 例えば、2024年度までに、運転免許証とマイナンバーカードの一体化を進めます。転居時、住所変更手続を市役所で行えば、警察署での手続を不要とします。

 リアルとネットが密接不可分となる中、サイバー攻撃等への対処体制を整備するとともに、企業のセキュリティ強化に取り組み、デジタル社会のリスクに対し、正面から向き合います。

<抜粋以上、全文は首相官邸HPで閲覧可能>

村山 繁

DroneTribune代表兼編集長。2016年8月に産経新聞社が運営するDroneTimesの副編集長を務め、取材、執筆、編集のほか、イベントの企画、講演、司会、オーガナイザーなどを手掛ける。産経新聞がDroneTimesを休止した2019年4月末の翌日である2019年5月1日(「令和」の初日)にドローン専門の新たな情報配信サイトDroneTribuneを創刊し代表兼編集長に就任した。現在、媒体運営、取材、執筆、編集を手掛けながら、企画提案、活字コミュニケーションコンサルティングなども請け負う。慶應義塾大学SFC研究所ドローン社会共創コンソーシアム研究所員、あおもりドローン利活用推進会議顧問など兼務。元産経新聞社副編集長。青森県弘前市生まれ、埼玉県育ち。

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