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エンガジェット日本版 満を持して登場した「AirTag」の価値。10億台のiPhoneが追跡してくれる安心感と盤石のプライバシー保護(本田雅一)

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昨年来、噂だけは継続してあったもののいつまで経っても発表されず、もしかすると噂だけで終わりではないかと思われたApple製落とし物トラッカー「AirTag」が発表された。

これまでもTileやMAMORIOなど、落とし物トラッカーには様々な製品が存在している。いずれも仕組みは同様。スマートフォンがBluetoothを通じてタグを検出すると、その位置情報をクラウドにアップロード、これにより最後に確認された位置を示するというものだ。

AirTag(Amazon.co.jp)

筆者もTileやMAMORIOを使用したことがあり、実際に落とし物トラッカーのおかげで財布を発見したこともある。ところが段々と利用意欲は下がり、最近は存在をあまり意識しなくなってしまった(電池が残っているので使ってはいるのだが)。タグの付いたアイテムを見つけるのが思いのほか難しかったり、位置情報がかなりズレていたりといったことがあったのがその理由だ。

しかし、少しばかり試した印象ではあるが、Appleの落とし物トラッカーAirTagはこの手の製品が潜在的に抱える問題を克服しているように思う。iPhoneとの組み合わせでしかペアリングできないため、Android端末のユーザーは利用できないが、それを除けば現時点ではベストな製品と言える。

iOSが標準サポートすることの意味

発表イベント全体のレポートでも言及したように、AirTagの価値を高めているのは、iOS 14.5以降のiPhoneすべてがAirTagを探す道具になることだ。ちなみにiOS14がインストールされたiPhoneは世界中で10億台稼働している。

この数字が重要なのは、落とし物トラッカーは通信できる距離にある端末数が多ければ多いほど追跡能力が高まるという特徴を持っているからだ。

従来の製品は、落とし物トラッカーごとに提供されているアプリをインストールしておく必要があった。また、メーカーごとに仕組みも異なる。

落とし物トラッカーの中には、電池交換を初回は無料で行っていたり、新しい電池が入った新品への交換を安価に提供したりといった施策を行っているメーカーもある。その理由は、一度使い始めたユーザーに継続的に使い続けてもらうことが新しい顧客を獲得するためにも重要だからだ。

ところが、AppleはAirTagの登場に合わせ、落とし物トラッキングの基本機能をiOSの中に組み込み、本体の探索などに使う「探す」アプリから利用できるようにした。これによって、世界中で稼働している約10億台ものiPhoneが落とし物を追跡するためのセンサーになる。

AirTagのステンレス電池カバー、好きな文字や絵文字をレーザー刻印できるサービスや、質の高いキーホルダーやバッグタグなどのアクセサリも優れているのだが、AirTagのもっとも大きな価値は、やはりiOS標準で追跡できるところにある。

追跡性能の高さとプライバシーの両立

AirTagの2つめの価値。それはプライバシーが高いレベルで保たれていることだ。

冒頭でも紹介したように、落とし物トラッカーを機能させるためには、近くにあるトラッカーを検出したスマートフォン端末(AirTagの場合はiPhoneだけとなるが)がそのトラッカー固有のIDと(端末自身が取得した)GPS情報をサーバにアップロードせねばならない。

すなわち、(実際にそうなっているかどうかではなく可能性として)トラッカーを追跡する情報を発信する際に、誰が近くにいるのか、あるいはどの端末が近くにあるのかを特定することもできてしまう。

このようなことができてしまうと、AirTagの場合はiOS自身が対応しているため、テーブル裏にAirTagを仕込んでおくことで、近くにどんな固有IDを持つ端末がいくつあったかといった情報が得られることになる。あるいはトラッカーをいろいろな位置に置いておくことで、特定端末が移動した経路を探るといったことも技術的には可能だ。

しかしiOS 14.5では、AirTagの情報をiCloudサーバに中継する際、端末が特定できないよう端末固有のIDを類推できないトークンとして用いるうえ、頻繁にトークンを更新することで中継端末の秘匿性が高められているとのこと。このあたりはiOS標準地図のナビゲーション機能などで使われているプライバシー保護の手法と類似している。

使い方は簡単、設定もほとんど不要

iOS 14.5が組み込まれたiPhoneならば、AirTagの使い方は極めてシンプルだ。AirPodsなどのアクセサリと同様、iPhoneにAirTagを近づければ自動的に検出、画面に接続するかどうかを確認するダイアログがポップアップする。あとはタグをつける持ち物の名前(選択肢から選ぶだけでもいい)をつければいいだけだ。

「いやいや、そんなに落とし物なんてしないから」

という方もいるだろうが、AirTagは落とし物以外にも有効である。どこに置いたのか忘れたiPhoneを探すため、「探す」アプリやApple Watchを使って音を出した経験のある方もいるはず。

AirTagの筐体には電磁アクチュエータが装着されており、白いプラスティックのケース自身を振動させることでシャープで通りの良い音を出してくれる。朝の忙しい時間帯に「そういえば車のキーをどこに置いたっけ?」と焦ったり、クッションの隙間や裏に落ちている小さなアイテムを簡単に発見できたりする。

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さらにはウルトラワイドバンド規格を用いてデバイスの距離と方向を検出するU1チップを内蔵しているため、あと数メートルというところまで近づくと、AirTagがある方向(もちろん距離も)を示してくれるのだ。

これだけ高機能でも電池は1年以上持つ。ステンレスの部分が手で回せる電池カバーとなっており、購入できる場所の多いCR2032を自分で交換可能。IP69レベルの防水仕様なので浸水で壊れる心配もない。

では実際に落とし物をした場合はどうなのか? 最後にAirTagが見つかった場所が地図上に表示されるのはもちろんだが、「探す」アプリで持ち物を選び紛失モードに設定すれば、拾った人に電話番号などの連絡先とともに任意のメッセージを伝えられる仕組みとなっている。

NFC対応と”さらなるプライバシー保護”

紛失モードに入ったAirTagを誰かのiPhoneが見つけると、その位置情報が逐一、オーナーのところに通知される。位置は大まかなものだが、前述したように近くまで行けば、あとは目の前まで誘導してくれる。

また、AirTagにはNFCが組み込まれており、iPhoneはもちろんNFC対応のAndroid端末をかざすと、そのタグのシリアル番号を添えたURLが発行され、対応するAirTagのページに飛ぶ。このページには通常、AirTagのシリアル番号しか表示されないが、紛失モードに設定されている場合は、所有者のメッセージと連絡先が表示されることになる。

このあたりは製品の知名度が低ければ、そもそもAirTagにスマートフォンをかざしてみる人も少ないかもしれない。しかしAppleが純正品として提供するわけで、どうすれば所有者とコンタクトが取れるかの手順が定着すれば、落とし物トラッカーの有益性はさらに高まっていくに違いない。

そしてこのNFCを使ってアクセスするページにはAppleのさらなるプライバシー保護への配慮も見られる。見知らぬAirTagが自分の持ち物に入れられていた場合などに備えて、電池蓋を開けて追跡を無効にするための手順も紹介されている。これだけならば、隠されたAirTagを発見できない限り、追跡される可能性が出てきてしまう。

しかしiPhoneは(自身の端末とは)ペアリングされていない、またペアリングされている端末とも繋がっていないAirTagが長時間、近傍にあり続けることを検出すると端末上で警告を発する。特定の人物の移動経路を追跡するために使われる可能性を排除するためだ。

このようなAirTagを検出した場合は、所有者でなくとも音を鳴らせるため、例えどこかに隠してあったとしても見つけられる。実際にそうしたことをする者がいるかどうかはともかく、こうした機能があることで悪用を事前に抑制できるだろう。

こんな用途に使いたい

これまでの落とし物トラッカーに比べ、AirTagはかなり使いやすく機能的という印象だが、ではどんなものに付けたいか。

鍵やカバンは定番。自転車のサドル下に取り付けておけば盗難対策になるかもしれない。筆者はレンズキャップポケットが付いたカメラストラップを使っているので、その中にも入れておきたい。

一方で11グラムという重さはともかく、厚みは8ミリと決して薄型とは言えない。カバンの中やキーホルダーとしての使い勝手は悪くないが、財布などのコンパクトなものだと邪魔に感じるかもしれない。とはいえ、薄さを求めるところに入れておくのでなければ、その有益性は明らかだとも感じる。

4個入りパックなら1個およそ3000円。今までいくつもの類似製品を試してきたが、AirTagは初めて筆者の生活の中に定着する落とし物トラッカーになりそうだ。

AirTag(Amazon.co.jp)

※AirTagは人・動物には利用できない仕組みになっています。

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