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11/03/2022
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2月の「第68回 FFXIVプロデューサーレターLIVE」では、「ファイナルファンタジーXIV」のグラフィックスアップデートや、「暁月のフィナーレ」中のアップデート予定など、長期的な展望が発表された。かなり気になる内容ばかりで、追加情報が欲しい人が多いだろう。【この記事に関する別の画像を見る】 そんな期待に応えて、発表された内容について、「FFXIV」プロディーサー兼ディレクターの吉田直樹氏のオンライン合同インタビューが開催され、記者からの様々な疑問点に吉田氏が回答した。 3月4日に予定されている次回の「FFXIVプロデューサーレターLIVE」では、「暁月のフィナーレ」パッチ6.1特集のパート1として、アップデートの具体的な内容や、今回語り切れなかった詳細が明らかになる。 また、発売直後の混乱を防ぐために停止されていたフリートライアルが、2月22日から順次再開される。「FFXIV」を遊んで見たいと思っている人は、まずは無料で遊べるフリートライアルに挑戦してみて欲しい。■ オンラインゲームというジャンル分けはもうやめたい――「FFXIV」では10年という長い年月をかけて1つの物語が完結しました。パッチ6.1以降では、また新しい物語というか冒険がプレーヤーを待ち受けていると思います。新しい物語も同じような期間をかけて展開されていくのでしょうか? ストーリーのコンセプトなど話せることがあれば教えてください。吉田氏: コンセプトという意味では「冒険」です。今は冒険者に光の戦士とか英雄という肩書がくっついていますが、2.0をスタートした時のように、改めて1人の冒険者として、色々な謎に向かっていく冒険を、しっかり新しくお届けしていきたいということが全てになっています。 「ハイデリン・ゾディアーク編」というのは、たぶん5.0くらいから急に言い出しているんです。2.0や3.0を作っているときにそんなことを思いながら作っているかというと、正直そんなことはないわけです。この先、同じような長さで、サーガを描くかどうかはわからないです。正直に言いますが、そこは1つ1つの物語という節目を、プレーヤーの皆さんがワクワクできる冒険を描いていった時に、今回「暁月のフィナーレ」でほとんどの伏線は解決していますが、世界にまだ横たわる謎みたいなものについては、当然まだアイデアはありますし、それらを描いていく過程で、これはまたひとつの大きな流れにしても大丈夫だなとなった時にそうすると思います。 序盤は単発の冒険もいいけれど、なにかもっと大きなものに立ち向かっていきたいという雰囲気になったら、多分そちらに舵を切っていくと思います。前半は僕らにとってもまた、1つ1つの物語を皆さんに全力でお届けするというコンセプトに立ち戻る、という感じのつもりでいます。 「漆黒のヴィランズ」も「暁月のフィナーレ」もそうですが、長年やってきた物語の種明かしの部分、いわゆる解凍編をものすごいコストをかけて叩きつけたからこそ、あの衝撃になっていると思うので、いきなり7.0であれと同じくらいの衝撃を受けるかといと、積み上げがまた必要だと思っています。 とはいえ、ゲームとして大満足いくようにするのは当然、いつも僕らは毎回それを課題とか目標にしているところですので、達成していけるようにひとつずつ、プレーヤーの皆さんと一緒に、河原に石をひとつずつ積み上げていって、どこまで高くできるか「一緒にやっていこうぜ」という気持ちでいます。――ここ数年で大きく変わったところとして、ストリーマーの存在があると思います。吉田さんからみたストリーマーの印象や、実際にストリームするときに他社が表示される配信で、設定などを慎重に行なう人が多いが、そういったところをオプションなどで対応する予定はありますか。吉田氏: あまり考えたくはない、ただ僕は立場上考えなくてはいけないんですが。例えば他人を表示しないオプションを配信用に用意したとすると、人がいないMMOを放送できてしまうんですね。一般の大多数の人から見て、配信モード中ですと画面に出したとしても、その違いは分からないので、変なネガキャンに使えてしまうこともあるので、正直言うと、そこに関してはあまりポジティブではないです。 ただ、もともと大人気なストリーマーさんがプレイすると、人が寄ってきてしまうということはあります。スターがわが町にやってきたみたいなものなので。そういった案件をご報告していただいたときには、改めて我々から注意点をお伝えするなどして、サポートしていければと思います。――キャラクターの表示に対してはそう思いますが、例えばプレーヤーの名前の初期状態をイニシャルで表示するとかそういったサポートはないのかなということが気になっていたんです。吉田氏: 悩ましいな。シチュエーションによると思うんですよね。言いたくはないですが、立場上ネガティブに働くことを考えなければならない立場なので、名前が表示されることで自制心が働くこともあると思うんです。よく駅前でテレビカメラがあると「イエ~!」とかやっている人がいるが、全国に顔を晒しちゃってるけど大丈夫かなと思うんです。あれでも、頭の上に名前が出ているとやる人はあまりいないと思うんですよね。バランスかなと思っていて、オプションとしてはイニシャルに変えることができはするので、そういうところを啓蒙していくことからかなと思います。配信されるんであれば、こういうところに注意してくださいという表示を作るとか。――例えばLoadstone上で?吉田氏: そうですね。ただ今回「漆黒のヴィランズ」から「暁月のフィナーレ」に至る間の中で、特に海外の数十万、数百万のコミュニティを持っている配信者さんがこぞって「FFXIV」をプレイし始めて、ストリームをしてもらったときには、あまり遮る人はいなくて。みんな声掛けしながら、どちらかというと、コンテンツクリアの場所で待っていて、みんなでクラッカーを鳴らしたりとか、整列して、「いよいよ蒼天のイシュガルドに来たね、おめでとう!」みたいな。あれが「FFXIV」の持っているコミュニティの温かさというか、新規の人を歓迎するとても良いところ。それは配信者であろうが、そうでなかろうが、この11年一緒に作り上げてきた雰囲気だと思っています。僕はどちらかというとあそこを信じたいし、何かあったら、そういうことはしないようにしようねという話をして、何でもかんでもシステムで封鎖して、変なルールでがんじがらめになっていく世界には、正直言うとあまりしたくないという気持ちが僕の根本にあります。 僕も、20年以上北米にサーバーあるゲームで育てられて、色々な人に優しくしてもらって今があるので。規模が大きくなったからこそやらなければならない部分があるというのもわかってはいるんですけど、どちらかというと、あんまりシステムで制限したり、ルールでがんじがらめにしたくはない。そうしてしまうと、今度はそのスイッチをオンにしないで配信している人を攻撃する可能性があると思っていて、そうしなければならないになってしまう。だから、ありとあらゆる方向性を考えていかなくてはならないのは僕の立場で、繰り返しになりますが、今のところはあまり考えていないです。一部騒ぐ人もいるとは思うんですが、節度を守ってプレイされている方のほうがはるかに多いので。――PLLで「1人でもみんなでも遊べるRPGの進化」というテーマを掲げられましたけれども、改めて、今プレイしてくださっている「FFXIV」プレーヤー以外に、どういう方にプレイをしてもらいたいと考えてそういうテーマを掲げたのか。例えば、いっそオフライン感覚で遊んでもらってもいいよという形への舵切りなのか。とはいえ、そういう形で入ってきた方に、オンラインのコミュニティに触れて欲しいという、その層の広がりを意識したものなのか、そのあたりを教えてください。吉田氏: これはかねてから、インタビュー等で皆さんにお話してきたと思うんですけど、僕はオンラインの世界というか、MMOの世界には、現実世界で体験したことのないようなカルチャーだったり、ゲーム体験というものが間違いなく存在すると思っているんです。それを今でも信じています。 最終的にそれを皆さんに届けたいという気持ちは、何一つ変わっていないです。ただ、ここまでやってきて、ここまで認知度を上げてきてもなお、オンラインだからという理由がアンケートでやらない理由の1位にくるということは、今までと同じやり方をしていても駄目なんだろうと。 そうなのであれば、例えばコミュニティの皆さんや、プレーヤーの皆さんが友達を誘う時、「シナリオは全部ソロでクリアできるからおいでよ」と、その一言を言ってもらえるためにやろうとしています。――では、コミュニティを広げていきたいというところは相変わらずというところですね。吉田氏: 「FFXIV」のシナリオよかったね、最高だったね、この先も楽しみだね、でいいんです。ただ、これは麻雀を実装した理由と同じですが、そのうちの何パーセントかが、ふとしたきっかけで、気まぐれにマッチングでコンテンツにいってみたら、思ったよりもみんな優しくてよかったとか。それをきっかけに、普通にマッチングでゲームを始めてくれれば、マルチプレイだからこそのおもしろさとか、実は思っていたイメージはあくまでも食わず嫌いだったんだなとか、そういうところに最終的につながっていってくれて、そういう人がまた新しく、苦手意識のある人たちに、「いや俺でもやれて、本当にストーリーやるだけやって1人大丈夫だから」と、それを武器にしてもらいたい。それはマーケティングPRチームの武器でもあるし、コミュニティの皆さんの武器でもある、メディアの皆さんにも改めてそれを言えるようにしたい。 ほとんどが1人で遊べるけれど、ダンジョンだけはマッチングが必要なんですとか。7.0では、まだ8人蛮神戦は対応できないとはいえ、そう言えるようにできるわけです。例えば7.0のPRでインタビューをする時に、「FFXIV」の特集を組んでいただく時に、メインストーリーのIDはもう全て1人でオフラインゲームのように遊べて、マッチングが必要な8人パーティでは責任が薄いし、みんな優しいし、最悪、戦闘不能になったとしてもクリアできるから大丈夫、みたいな。 このメッセージ性は、ゲームのジャンルを超えていけるのではないかと思っています。ただ、繰り返しになりますが、最終的には人と遊ぶこと、世界に人がいること、世界が共有されていることのすごさ、面白さというところに最後には到達して欲しいと思っています。間口を3倍にも4倍にも広げていきたいんです。正直もう、ネットワークに繋がっていないゲーム機はないと思うんですよ。だからもう、オンラインゲームという名前をやめたいくらいです。――ジャンル自体を、「1人でもみんなでも遊べるRPG」にしたいという意味が込められているということですよね。吉田氏: そうです。「フォートナイト」にオンラインゲームって名前は付いていないですよね。今は「ファイナルファンタジーXIVオンライン」になっていますが、オンラインを取りたいくらいです。なぜMMOだけそう言われるんだろうと。――1人でも遊べるという部分を強化するというお話がありましたが、そこからみんなでも遊べる部分への誘導。例えばスキル回しを学べる中級者の館のようなものを用意する予定はあるのでしょうか?吉田氏: 課題だとは思っています。逆に、メインストーリーのすべてのIDをフェイスで進めるようになると自己練することになるのではないかと思っています。ほかのプレーヤーが一生懸命やるからクリアできるけれど、IDをできるだけ早くクリアしようと思うと、フェイスにばかり頼ってはいられないじゃないですか。だから、必然的に練習の場が増えるのではないかと思っています。 パーティコンテンツでも、クリアできればいいじゃないと思うところもありますが、ただ上手くなりたい、そのための正解を学ぶ機会がゲームの中にシステム上ない。木人はありますが、けっこう際にありますが、なにかしらもう一段やりたいということを話し合ってはいます。――サポートNPCと一緒にダンジョンにいった時に、何らかのスコアで評価してもらえるようなシステムがあるといいですね。吉田氏: それ、皆さんおっしゃるんですが、僕らは毎回バランスを調整しているし、拡張パッケージが出たら全部の習得レベルをチューニングしているのでそれを毎回全部にやるんですかっていう。ちょっと掛け算をイメージしていただきたいんですよね。そんなのは開発の都合だろと言われてしまえばもちろんそうなのですが、そう簡単に準備できない理由はそういうところにあるんです。 できるだけフットワーク軽く皆さんのジョブを調整していきたいという思いがあるのに、判定コンテンツみたいなものを作ってしまうと、それがあることによってジョブの調整をするのがめんどくさいという意識が働いてしまう。僕らも人間なので、そっちもやらないといけないくらいなら、もうやめておくかと。 それが自分たちの足枷になって、ひいてはプレーヤーの皆さんのプレイ体験の足枷になる可能性があるものを、おいそれと実装する判断はしづらいというところは、ご理解いただければです。 人をたくさん雇ってやればいいやないかと言われるかもしれないですが、そのレベルの仕組みを作ったり、スキル回しをチェックや調整できる人材は、やはりこれもそう多くはない。でも、課題だと思っているのは確かなので、頑張っていきます。■ 8人IDは全く新しい形に改修――先日の発表で、全メインクエストの必須IDと4人討滅戦がフェイス対応になるという発表がありましたが、合わせてフェイスシステム自体のアップデートは予定されているのでしょうか? また何かフェイスに合わせてのIDの難易度調整などを検討されてたりするんでしょうか?吉田氏: これはもうプレイしていただくしかないと思うんですけど、当然フェイスのAIもかなり強化しましたし、スタッフの多くが、フェイスのアルゴリズムを書けるような準備をしてきたからこそ、今ID改修に踏み切れているので、内部的なアップデートという意味ではめちゃくちゃ多いです。6.0の頃からすでにやっていて、実装もされています。 ただ、皆さんの目に見える形でのアップデートは何だろうと言うと、たぶん頭が良くなったなとか、よくかわすなとか。ただ、それをもってしても対応できないようなギミックを作ってきてしまっているので、それらはフェイスでもクリアできるように、IDのギミックも調整しているものが結構あります。――例えばオーラムヴェイルのモルボルの実を取って異常状態を回復するギミックなんかは改修されますか?吉田氏: 残念ながらオーラムヴェイルはメインストーリーの必須IDではないので対応されてないです。――ちなみにフェイスの掛け合いも「暁月のフィナーレ」では結構売りにされていましたが、そういったものは新しくなるフェイスシステムでも楽しめるようになるのでしょうか?吉田氏: あるものもあればないものもあります。名もなき手伝い冒険者はそんなにしゃべらないです。あまり感情移入しても、一世界には連れていけないですし。なので、ドライになる場合もあれば、名のあるやつが一緒に来た時にはちゃんと話すことになります。 これは改めて3月4日にあるパッチ6.1特集のPLLでお伝えしていくつもりですが、フェイスというシステム名の呼び方をやめることにします。どうしてもイメージがそちらに引きずられてしまうので。幻体を育成していくことをフェイス、つまり暁のメンバーはフェイスという考え方ですが、それ以外はストーリーサポーターとと呼ぶか、ストーリーサポートと呼ぶかそんな形で、あくまでも別システムになります。このストーリー上のダンジョンをサポートして、NPCと一緒にクリアするシステムという形に変えていきます。――では、そこのダンジョン専用のサポーターということで、育成はできないということですか?吉田氏: はい、そうです。土曜日に言うと混乱しそうで言わなかったのですが、改めて6.1特集で詳しくお伝えしようと思っています。――メインクエストが大幅に改修されることで、コンテンツルーレット:メインクエストに対応する2つのダンジョンが大きく変わるということですけど、これは普通のダンジョンと同じような3ボス制のIDになって、そこに当てはまらない敵がインスタンスバトルとして作られるという認識でいいでしょうか。吉田氏: はい。なので、おそらくメインストーリーというルーレットはなくなると思います。普通のIDとして、レベリングとかに並ぶことになります。アルテマウェポン戦はタイタンやイフリートと同じ位置づけになります。――ガイウスもそういった形に切り替わっていくのですか?吉田氏: ガイウスをどこに置くかはネタバレになるので言わないですが、ガイウスを切り出すとは一昨日は言っていないはずなので。――そうなると、IDの内容は大幅に変わるということですか。例えば魔導城プラエトリウムだと魔導アーマーに乗ったりといったギミックがありましたが。吉田氏: ごっそり変えています。――既存のプレーヤーも新規IDとして楽しめるという認識ですか。吉田氏: まあ、そうですね。もう飽きたと思いますけどね(笑)。あの2つの8人ダンジョンに関しては、新生の時にレギュレーションを無視して大急ぎで作ったあの2つのIDは、もう2度と遊べなくなってしまいますね。外郭で、シドが来るのを「おせー」と言ってみんなでダンスしながら待ったりするのはなくなります。リウィアさんを8人で、というのもなくなります。――既存インスタンスIDがサポートNPC対応になることによって、冒険者小隊が今後どういう扱いになっていくのかすごく気になっているんですが、答えられることはありますか?吉田氏: 以前にもPLLでお伝えしたかと思うのですが、実は冒険者小隊の中身は、フェイスシステムとは全く別の仕組みで作られています。冒険者小隊はどちらかというとプランナーがスクリプトで書いた、フェイスよりずいぶん製作レベルが下の、IF文の集合体というとちょっと失礼かもしれないけれど、そういったもので作られています。 この先さらに冒険者小隊を発展させていくためには、全てのフェイス対応が終わったタイミングでフェイスと同一のシステムに置き換えてしまった方がいいと思っています。それまではアップデートを一時止める予定です。すごく愛着を持って育成してくださっているのはわかっているので、もしかしたら報酬の追加はさせていただくかもしれません。これ以上作り進めてしまうと、フェイスとの落差が激しくなりすぎて、フェイスやストーリーサポート機能になれるとストレスがすごくなってしまうので。いずれ合流させるためにも、いったん開発コストはメインストーリーIDの対応に割り振らせていただければと思っています。■ グラフィックス改修は吉田氏からの大号令――PLLでグラフィックスが進化しますという発表をしたときのコメントを見ての手ごたえを教えてください。吉田氏: まずあの最初に出した、疲れた吉田見たいといわれた画像を出した時に、もう少し「これはないわ」とか「こういうのじゃないよ!」という声がバーッと出るかと思ったんです。そしたら皆さん優しくて。「うん、きれい、うん……」、「なるほど……」みたいな空気で、「いや、これは違うと思うんだよね」と言った瞬間に「違う違う!」となったので、みなさんめちゃくちゃ優しいんだなと。 開発チームが頑張ってクオリティを上げた絵が出てきて、微妙と思ったけど、それは言い辛いので。でもちょっと違うと言った瞬間に、これは違う、そうそうこれじゃないとなったんです。あそこは一瞬焦りました。やばい、これがいいと言われたらどうしよう、と。 開発チームもグラフィックスクオリティを上げるという時に、今は当然、テクニックも手法もシェーダーも、テクスチャーの描き方もある中で、どこを目指すかというのは結構難しいんですね。ただ、今回僕と一緒にテクニカルアニメーターとキャラとBGの各リーダーが全員で集まって、何回もZoomミーティングしてテストデータを見ながら、あーだこだーとやっていたんですが、最終的に僕らが思っていて、きっと「FFXIV」プレーヤーの皆さんが求めるであろう、グラフィックスクオリティの向上は、世間一般に言われているフォトリアルでもなければ、すごく反射の多い、ちょっとビカビカした塩ビ人形ぽい質感ではないだろうし、例え「FFXIV」をやっていない人には、そういったCGライクなものの方がCGのクオリティとしては高く見えるかもしれない。 でも、僕らはそれをとるべきではないよねという話をして、今回のサンプル作りをやったのです。今のキャラクターのニュアンスに近いと「FFXIV」を知らない人には、「なんだグラフィックスアップデートと言っても大したことないじゃん」と言われる危険性もあるんです。でもそれはいいじゃないかと。どこまで突き詰めてもMMOなので。自分が生み出した、自分のかけがえのない分身であるキャラクターが、違うこれじゃないとなってしまう方がよくない。そこをすごく話し合って作っていったので、そこをよかった分かっていてくれて、そうなんだよこれなんだよと素直に言ってくれた人が本当に多くて。このタイミングで出すのは怖いんですけど、僕らサイドとしてもプレーヤーコミュニティと1回握手をできた感じなので、そこはよかったと思います。――このグラフィックスのアップデートは、吉田さん主導で始まったものなのか、それともスタッフの中からアップデートしたいという熱意が上がってきたのか、どちらなんでしょうか?吉田氏: それはやはり僕から言わないと、開発からは言わないですよ。個人個人と話をすると、もう少しメモリが欲しいとかはあるんですよ。テクスチャーも、1層じゃなくてね、2層3層でマルチテクスチャをもっと使ってブレンドして、とか。マルチテクスチャはパフォーマンスを食うんですが、できないとクオリティを出しづらいので。でも、マルチテクスチャにすると今まで1枚でよかったところに3枚貼らないといけなくあるんですよ。つまり、綺麗になるけれど、作業工数は絶対に増える。だから、マルチテクスチャをあと1枚、欲を言えば2枚というけれど、でもこの広いエリアをあと4カ月で作らないといけないと考えると、マルチテクスチャが使えない方が割り切れていいみたいな。なので、僕からやるぞと言わないと、そうそうみんなの方から「やりましょう! ここですよチャンスは!」とはならないですよ――それではやはり吉田さんの方から?吉田氏: 大号令ですね。みんなそろそろ限界だったでしょ、と。やはり悔しいですよ。他が色々な手法やメモリ、シェーダーも潤沢に使っていく中で、僕らは長い間この手法でしかものを作れないので。ただ当然、工数が上がるので、自分たちの首を絞めることにもなりかねないけど、今回やろうと思うんだけどどうだいと聞いたら、みんな「よしやりましょう!」という感じでした。 最初にすごく心配していたのは物量だけですね。その回答をする前に、7.0で全部の装備をコンバートする必要があるかどうかをまず聞かせてください。回答はそれからにしたいですとか。NPCを全て新仕様に置き換えるのが必須かどうかとか。7.0の発売予定のイメージをまず教えてくださいとか。俺だってエンジニアの端くれなので、わかっている。そんなことできるわけないじゃんと。 しかもそれをやれと言ったらみんな嫌だし、無理だと言うでしょ、だから7.0からの新リソースは全部対応しよう。あとはできるところから順次やっていこうと、それは僕からプレーヤーの皆さんに説明する。多分プレーヤーの皆さんもそれでいいと言ってくれると思うよと。だから僕らはそれを信じて前に進めていこうと。今やらないと多分一生できない。そう言ってくれるんだったらやりましょう。がんばりましょうという感じでしたね。 プロデューサー兼ディレクターは大変なんです。開発のモチベーションと説得も必要なので。プロデューサーだけでディレクターが別だったら、「そろそろグラフィックスアップデートも考えてよ直樹ちゃん」みたいな感じで済んだかもしれないですが。さすがにそのレベルのプロデューサーはいないか(笑)。――7.0ではプレイステーション 4への対応もしていくということでしたが、PS4への対応はいつごろまでを考えていますか。吉田氏: 当たり前ですが、そのハードがどれぐらい稼動してるかということが全てです。我々は、色々なハードウェアで遊べることを目標にしています。それによって、全世界1人でも多くの人にプレイをしてもらうことが、掲げているコンセプトの1つでもあります。とはいえ、やはりデバック工数などを考えていくと対応ハードウェア少ない方が僕らも楽なんです。それは本音です。ハードがほとんど稼働していないのにサポートし続けることは当然ないわけです。 ただ、僕らも苦しんでいますが、プレイステーション 5の出荷台数も半導体不足のあおりを受けているので、買いたいと思ってもまだ買えないっていう人が7.0の状況下では多いのではないか。そうなのであれば、少なくとも7.0の時期を考えると、PS4というハードで遊べるようにした方がいいだろうと。今のプレーヤーの皆さんが安心して遊んでいけるということを考えても、それを今明言しておくべきだろうと思いました。ただ当然、明言するだけでは意味がなくて、明言するからにはきちんとした計算や、処理の選定を行なっています。 現状のPS4版は短期間である程度ハードスペックに頼った形で対応した作り方をしている部分もあるので、まだ最適化する余地が残っていることを改めて検証しました。ですので、まずは7.0の前に6.Xシリーズ中にPS4の最適化を何段階かいれて、まずは今よりも軽く動作するようにした上で、第1弾のグラフィックスアップデートでアップデートする機能をPS4にも全部盛り込みます。その上で、グラフィックスオプションを増やして、例えば新しいフォグのレイヤーが1枚加わったものに関しては、例えばPS4でフレームレートを優先したい場合は切ってくださいとか。影のテクスチャー解像度や影の計算精度も、同様にフレームレートを優先したいのであれば下げるというオプションをつけることによって軽くできる。これが「FFXIV」の基本的なグラフィックスエンジンの考え方になっています。今回、皆さんにお見せした1ヶ月と1週間でのテストデータですけど、あれが標準だと思ってください。 あれ以上いくつのシェーダーをかけていけるかというのは、その状態で何百人も描画をして、バックグラウンド側の追加処理を入れて、それにすべて最適化した上で、やばいやりすぎたとか、これはもうオプションに回さないと駄目だとかをこれからやっていくことになります。ただ設計思想としては全てオプティマイズできるという思想のもとに作られています。 それはPS4だけではなく、PCも同様です。影の精度をさらに上げたいというオプションがあれば、それはお使いのPCの性能に合わせてやってみてくださいという形になるでしょう。し、だから現状ではどれでどのくらいになるということは申し上げられないです。これからまさにそこを作り、調整していくことになるので。とはいえ、PS4でおとといお見せした絵が出ないかというと、全然そんなことないです。――7.0が出る2年後くらいには、PCの性能がかなり上がっていると思いますが、そこを目指してのグラフィックスアップデートになるんですか?吉田氏: いいえ。繰り返しですが、我々はスタンドアローンクオリティのゲームを目指しているわけではないのです。PCのてっぺんに合わせた開発なんてしないです。わかるんですよ。皆さんMODを入れたり、実写のような画像をネットに出してこられる方もいると思うんですが、あのレベルのPCを持っている人たちが果たして何人ぐらいいるのか、データとして知っているので、あれを目指してもあまり意味がない。特に我々はMMOですしね。どこまで頑張ってもやはりスタンドアローンのゲームには勝てない。そうなのであれば、そこにコストを割くくらいならPCの上位層の中間くらいで、綺麗に出るね、すごく滑らかだねというところを目指して、多くの人に楽しんでもらえた方が、遥かに良いと思っています。 あとはやはり半導体不足がありますね。性能は上がるかもしれないですが、高くて買えないと思います。マイニングブームもあって、いろいろ不安要素が多いので、2年後のスペックを予想してそこに合わせることは正直、今はビジネス上ありえないかなと思います。――グラフィックス強化のタイミングでキャラクタークリエイトの幅は広がるのでしょうか? 例えばアウラの角と顔を別に選んだりできるようになりませんか?吉田氏: そこはグラフィックスのアップデートとは別問題なんです。パラメータなので、通信料の問題が非常に大きいので、現段階ではやるともやらないとも言わないです。テストしていくしかないので。ただ、正直、デザイナーはあまり乗り気ではないですよ。掛け算なので。しかも辛いのが、この種族のこれを増やしたのなら、俺のこれも増やせというのが始まってしまうので。 グラフィックスアップデートと同時にやるのは、作業工数的に結構厳しいです。世界中の開発会社さんに協力していただいたとしても、メモリも含めての主要設計にガリガリ絡んでしまうところなので。テクニカルアーティストと呼ばれる人たちが慎重にやらないと施せないルールなので、現段階で、イエスもノーとも言えないですけど、グラフィックスのアップデートと同時にやるのはかなり厳しい状況ではあります。――今回フィールドの配置オブジェクトが増えていましたが、キャラクターの表示人数は増えないんでしょうか?吉田氏: 今以上に減らすことはないと思いますが、いたずらに増やしてしまうとグラフィックスアップデートのパフォーマンスチューニングと綱引きになってしまうので。今の数は最低限保持するのがベースにあります。これ以上たくさん表示したいかどうかは、人によると思うんですよね。今以上にたくさん表示してほしいという人と、表示数は今のままで十分だからもっと綺麗にして欲しいという人なら、後者の方が多いのではないかという気がします。おそらくモブ戦とか、ユーザーイベントでない限り、それほど不都合はないのではないかなと。――ユーザーイベントの記念撮影で、全員が表示されないことはありますね。吉田氏: 難しい綱引きです。それだったら撮影モードの時にキャラクター表示の制限を突破するように、グループポーズの中に表示人数の最大化みたいなものを。でもその時にいきなり人がたくさん出てくるんですよね。けっこう難しいんですよ。ただあれ以上下げることはないと思ってください。広げるとは言えないです。パフォーマンスを食うことをやろうとしているのに、同時に表示人数を上げますと言ったら、プランナーとかデザイナーにじゃあもう全部やめましょうと言われちゃうので(笑)。――グラフィックスエンジンの積み替えは検討されているのですか?吉田氏: おそらくですが、グラフィックスエンジンの巨大さをイメージできていないかも。取り換えられるというものではないんです。エンジンというと、車のエンジンのようなものをイメージされやすいと思うのですが、今はああではないんです。ありとあらゆる描画パイプラインがくっついた大規模な集積回路みたいなイメージなんですね。それを取り替えるということは、すべてのパイプラインをつなぎなおして、それに合わせてアセットの作り直しをしなければならないので、グラフィックスエンジンの取り替えはあり得ないです。 どちらかというと、今まで作ってきた「FFXIV」のエンジンに対して、実は使っていない高品質のシェーダーコードもあるんです。今回、これらを改めて最適化して使おうというものもあれば、完全に新しくパイプラインを足していくものもある。ですので、エンジンがパワーアップするという感じです。ディファードレンダリングを使った「FFXIV」独特の風合いは一切変わることがないです。■ 7.0トレーラーはすでに頭の中で動き出している――6.1以降物語について、詳しいことはまだ話せないと思いますが、ゾディアーク・ハイデリン編が6.0で終わったことで、これからの物語の方向性がまったく未知な状態だと思うのです。その中で6.Xシリーズをやっていくと、その流れのなかで7.0はこういう話になるのかということが見えてくるのか、それとも6.0シリーズと7.0はセパレートされているのかを教えてください。吉田氏: 当然、匂わせないと次に繋がらないから。でもなあ、4.Xから5.0って匂わせすらしなかったから、その時次第ですかね。ここはライブタイトルのいいところだと思っていて、皆さんの反応を見ながらダイレクトに脚本を調整していくので。僕の中ではもう7.0のトレーラーの絵は少しずつ動き始めているのですが、どうだろうなあ、わからないな。まあでも、僕のこの表情を見ていただければ、こいつまた楽しそうに何か作っているなという感じはわかると思うので。――7.0できっと吉田さんがすごく楽しそうなことを仕掛けているんだろうなということはわかりました。吉田氏: どう反応するか怖い部分はもちろんありますね。それは漆黒作っている時だって、暁月作っているだって怖かったんですよ。僕らは思い切ってこうだということしかできないし、それは今までもずっとやってきて、これからも多分かわらないので、また思い切ってやっていこうと思います。6.1の途中くらいからは「は?」「は?」という感じにはなると思うので、ますます7.0のイメージがわかない感じだと思いますので、楽しみにしておいてください――最後にメッセージをお願いします吉田氏: 一般的に1つのタイトルの運営だとはいえ、1人のトップがこれだけの期間、長く着任したままゲームを作りつづけていき、節目を迎えてもなお、とりあえず死ぬまでやるんだというケースはたぶんないと思っています。今回のグラフィックスアップデートもそうですし、長期的なところを見たうえで、よりでかくしていくぞ、まだまだ前人未踏の山をさらに高くしていくんだというのは、交代を考えていたらなかなかできないと思うんです。技術は引き継げても、思いはなかなか完璧な状態では引き継げないと思っているので、ここまで「暁月のフィナーレ」という1回目のクライマックスでまとめ上げてしまうと、次の山はより大変だと思っています。だからこそ、僕自身が続けていく必要があると思っている。なんども吉田が辞める発表をしそうだという噂がでますが、病気だとか、事故って死んだとかではなければないと思っているので、ぜひこの先も「FFXIV」の成長を見続けていただきたいです。 僕は所信表明の時に、全ては全てのお客様のためにと言ってこのプロジェクトを引き継いでやってきて、それは今でも変わらないので。プレーヤーの皆さんにももちろん感謝していますし、これからも開発、運営、マーケティングPR、コミュニティとメディアの皆さんのお力を借りながら、発展していこうと思っています。ぜひこれからもよろしくお願いします。――ありがとうございました。© 2010 - 2021 SQUARE ENIX CO., LTD. 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GAME Watch,石井聡(クラフル)
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