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11/03/2022
「スマートシティ」と聞いて何を思い浮かべるだろうか。未来の話、AIを生かした都市、IoTを活用する便利な生活――など、大ざっぱなイメージしか浮かばないかもしれない。「一部の企業が推進しているだけで自分には関係ない」そう思う読者もいるだろう。
スマートシティの考え方はさまざまだが、日本政府が目指す未来社会像「Society 5.0」の中では「政府をあげてスマートシティの取り組みを推進しています」と明言されている。特定の企業だけでなく、政府までもが注目している社会の姿なのだ。
今回はスマートシティの基本をおさらいし、この分野に注力する企業にスマートシティの“現在地”を尋ねた。すると、私たちの将来の幸せな生活を作るビジョンが見えてきた。
内閣府はスマートシティの定義を「ICTなどの新技術を活用しつつ、(中略)都市や地域の抱える諸課題の解決を行い、また新たな価値を創出し続ける、持続可能な都市や地域」と説明している。
定義は抽象的だが、自動運転バスや顔認証を活用した買い物、ロボットやドローンを使った配達、行政手続きの電子化、防犯カメラとAIによる犯罪予防、さまざまな機器・場所から集まるデータ活用――など具体例を挙げれば身近なものだと気が付く。
内閣府はこうしたスマートシティをSociety 5.0のショーケースと位置付けている。Society5.0とはIoTでさまざまなものをインターネットにつなぎ、共有した情報をAIで高度に活用する社会の姿をいう。マンモスを追っていた狩猟社会(Society 1.0)、作物を育てていた農耕社会(2.0)、産業革命で幕が開けた工業社会(3.0)、そしてIT技術やインターネットが普及した情報社会(4.0)の先にある社会だ。
これまでは生きるため、便利になるための社会を発展させてきた。これからは少子高齢化や自然災害といった社会課題を解決したり、収集したデータを活用して新たなサービスや価値を生み出したりすることが求められている。
日本政府も注目するそんなスマートシティの実現に向けて動き出しているのが、1996年にネットワークカメラ(IPカメラ)を開発・販売したスウェーデンのアクシスコミュニケーションズ(以下、Axis)だ。
ネットワークカメラの分野で新技術を次々に開発して業界トップクラスのメーカーとしての地位を築いたAxisは、2018年に自社の技術や知見を生かしたスマートシティ事業を本格スタート。21年には日本においても展開を強化する方針を定めた。
Axisのシニアキーアカウントマネージャー スマートシティ担当の大部信さん(事業開発本部)背景には同社のビジョン「Innovating for a smarter, safer world」(イノベーションによる、スマートで安全な世界の実現)がある。「Society 5.0では人が幸せになるために何をするかが重要で、それはAxisのビジョンと重なります」とアクシスコミュニケーションズのシニアキーアカウントマネージャー スマートシティ担当の大部信さん(事業開発本部)は説明する。
では、なぜ日本でスマートシティを推進するのか。大部さんは人口減少と少子高齢化の進む“課題先進国”の現状があると説明する。「日本は先進国の中でもいろいろなチャレンジを率先してやる必要があると思います。今まで人が判断して動かしていた社会の仕組みが、人口減少によって成り立たなくなったとき、テクノロジーを活用するしかないのです」(大部さん)
地域が抱える課題を分解して官民連携で解決することで「人が幸せな社会」を作れるという。例えば、過疎化が進むエリアで自治体と協力して自動運転の巡回バスを走らせ、高齢者が乗って買い物をして帰ってくる取り組みもスマートシティの一環に当たる。
人の役割をテクノロジーに置き換えることで実現が進むスマートシティだが、こうしたビジョンを実現するためには物理的な構成部品としてIoTデバイスやAI技術が必要になる。「ロボットや自動運転車を活用する場合でも、結局は人間と同じ機能――目と耳、口、脳が必要になります」と大部さんは話す。
Axisはそれらのノウハウや技術を全て自社に備えているという。「ネットワークカメラは目に相当します。カメラに付けたマイクは耳ですし、スピーカーを使えば口の機能も補えます。レコーダーで映像を録画したり、Axisのパートナー企業であるAIベンチャーと連携して脳の代わりに状況判断や指示を出したりすることも可能です」(大部さん)
これまでAxisは、ボックス型/ドーム型ネットワークカメラ、1つの筐体にレンズブロックがいくつか入っている複眼カメラ、魚眼カメラ、温度を検知するサーマルカメラ、LANケーブルで給電できるネットワークスピーカー、レコーダー、画像解析ソフトウェアなどさまざまな製品を手掛けてきた。こうした製品を統合したトータルソリューションとして市場に提供すれば、今後世界的なトレンドになると期待しているスマートシティに寄与できると考えている。
Axisの製品群の一例(画像クリックで拡大)とはいえスマートシティはとても大きな構想のため、やるべきことは無限大にある。中でも注力しているのは「都市交通」「環境モニタリング」「公共の安全」の領域だ。この3つに自社の強みを注ぎ込む狙いだ。
ここまではビジョン的な話が多かったが、スマートシティは一歩ずつだが確実に実現している。Axisが注力する3領域では、次のような事例がある。
都市交通の領域では、羽田空港や茨城県境町で自動運転バスが本格運用されている。GPS装置などを使って指定ルートを巡回する仕組みだ。車内に搭載したAxisのネットワークカメラの映像をAIが分析し、運行中に立ち上がるなどの行動を検知した場合は、スピーカーから警告を出して安全を守る。遠隔操作が可能なので、従来のようにバスの運行地域ごとに従業員を置く必要がなく、過疎地域で有効という。
大都市での環境モニタリング事例が、街灯にカメラを内蔵した「スマートポール」だ。東京都の六本木商店街では、Axis製カメラを内蔵したスマートポールを設置している。カメラ映像から人流や年齢、性別などを分析することで、時間帯や客層に合わせた商品陳列にしたりイベントを開催したりするなどマーケティングに生かす狙いだ。
スマートポールについて大部さんは「今までお店のレジで店員が入力していた情報をAIで自動判別して正確なデータを得られるので、店長が勘でやっていた仕入れなどの精度を上げられます」「東京都新宿区や愛知県岡崎市、日本以外ではシンガポールなどでも導入が進み、スマートシティを実現するツールとして世界的に共通言語になりつつあります」と説明した。
同じ環境モニタリングによって、近年頻発する自然災害から人を守ることにも貢献できる。洪水被害が起きやすい日本では、国土交通省などが河川に監視カメラを設置して増水の危険をリアルタイムに確認し、避難の判断に役立てている。映像をライブ配信することで市民もチェックできるため「大雨のときに川や田んぼの様子を見に行くという危険な行動も、自宅から映像を見ることができれば解決します」(大部さん)。Axisも自立型の監視システムを持つ簡易型の河川監視ソリューションを提供している。
公共の安全の領域では、カメラを活用した行方不明者の早期発見や介護施設から勝手に外出した人を検知して職員に通知するシステムや、不審者をAIカメラで検知してスピーカーから音声で警告する仕組みなどに製品を活用できる。「逃げ惑う人がいたら何らかの危険があったと判断してアラートを出す方法もあります」(大部さん)
スマートシティの領域「公共の安全」でAxisが提供するソリューションの案(画像クリックで拡大)積極的な取り組みを進めるAxisだが、決して1社だけで実現できるわけではないという。「Axis単独で提供できるソリューションにも限界があります。自治体や企業などスマートシティを実現しようとしている方々の課題を解決するため、Axisのパートナーと連携しながら開発を進めています」(大部さん)
現在は自動で物事を判断するのに欠かせないAIやディープラーニングを手掛ける企業や、スマートシティを形作る多数の構成要素をまとめるクラウド基盤を開発する企業などとパートナーシップを結んでいる。
「今後もスマートシティ実現に関わる自治体や企業と連携を深めていきたいと考えています。まだ手探り状態かもしれませんが、一緒にアイデアを出し合いながら進めていけたら良いと思っています。『製品を買ってください』ではなくて、同じ日本国民の一人として誰もが幸せになるために、便利な世の中になるために、手を取り合って進めていきたいです」(大部さん)
スマートシティはいつ実現するのか――この質問は誰もが気になるところだろう。最後に大部さんに聞いてみると「スマートシティは『何年になったら実現する』というゴールはありません。だからこそ、Axisも日本全体でも、できることから一つずつ始めているわけです」と答えた。
企業や自治体がその垣根を超えて経験と知識を生かした取り組みを進めることで、幸せな社会に着実に近づいていく。Axisはそうした取り組みを進める企業・自治体とのパートナーシップを結ぶことで、製品や技術のノウハウを提供したいと考えている。先端の技術を持つAxisと連携し、スマートシティの実現を加速してはいかがだろうか。