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11/03/2022
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このところ日本経済の地位低下に関する話題を耳にする機会が増えてきた。日本経済の低迷は90年代から始まっており、最も大きな要因は製造業の輸出競争力が低下したことである。このままでは日本の衰退がさらに進む可能性が高く、弱体化した製造業を復活させるのか、国内市場を活用して消費主導で成長する道を探るのか、決断を迫られている。多くの人が望んでいる製造業復活は可能なのか、今でも製造業大国としての地位を維持しているドイツを例に考察する。
経済評論家 加谷珪一
経済評論家 加谷珪一
加谷珪一(かや・けいいち)経済評論家1969年宮城県仙台市生まれ。東北大学工学部原子核工学科卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当。独立後は、中央省庁や政府系金融機関など対するコンサルティング業務に従事。現在は、経済、金融、ビジネス、ITなど多方面の分野で執筆活動を行っている。著書に『貧乏国ニッポン』(幻冬舎新書)、『億万長者への道は経済学に書いてある』(クロスメディア・パブリッシング)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)、『ポスト新産業革命』(CCCメディアハウス)、『新富裕層の研究-日本経済を変える新たな仕組み』(祥伝社新書)、『教養として身につけておきたい 戦争と経済の本質』(総合法令出版)などがある。
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かつては、ドイツ製のカメラと言えば誰もが憧れる時代があった。音響機器や造船などの分野でもドイツは高い競争力を持っていたが、ドイツはこうした分野の多くから撤退している。日本企業が光学機器や造船にこだわり続け、スマホの台頭や韓国メーカーの低価格攻勢で厳しい経営を余儀なくされたのとは対照的と言って良いだろう。 ドイツの賢いところは、単純に撤退するのではなく、高付加価値にシフトできる分野をうまく見つけ出したことだろう。たとえば、船舶の建造については日本や韓国など後発国に譲ったが、動力となるディーゼル機関については、設計ライセンスを各国に提供するモデルにシフトすることで、極めて高い利益率を維持している。 船舶は世界中を航行するので、どの国で機関が故障を起こすか分からない。設計仕様が統一されており、部品の入手が容易であることのメリットは大きく、ドイツ企業はこの分野で圧倒的なデファクトスタンダードを握っている。 新しい分野としては、医療器機、バイオなどを開拓し、重電の分野ではITとの連携を強め、遠隔で保守を行うなど製造業のサービス業化を進めてきた。ちなみにドイツにはSAPという世界を代表するIT企業があり、ビジネスのデジタル化を後押ししている。【次ページ】同じ製造業でもビジネスモデルはこれほど違うお勧め記事
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