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11/03/2022
ソニーモバイルコミュニケーションズ株式会社と、ロボットベンチャーの株式会社ZMPが、「エアロセンス株式会社」を設立して産業用途向けドローンビジネスを開始すると発表し、8月24日に記者会見を行なった。「ソニーが」、「ソニーの技術が」という視点の報道が多いが、あくまでZMPとの合弁で、持ち株比率はソニーモバイルコミュニケーションズが50.005%、ZMPが49.995%となっている。
代表取締役はZMPの谷口恒氏。CTOの佐部浩太郎氏はソニーでペットロボット「AIBO」や、かつてはコーポレートアンバサダーにもなっていた小型ヒューマノイド「QRIO」などの開発に携わってきた人物だ。ソニー・インテリジェンス・ダイナミクス研究所時代には、本連載の過去記事の写真にも登場してもらっている。今回の会見会場ではほかにも、これまでロボットを取材してきた筆者にとっては久しぶりの顔が見られた。
ロボットは2005年の愛知万博時をピークに、やや下降局面の時代を経て、今再びブームを迎えようとしている。かつて世界に先駆けて、これまでにない家庭用ロボットを製品展開していたが、2006年に全てやめて撤退したソニーと、2001年創業後、最初は家庭用ロボットなどを展開したが自動運転技術などに活路を見い出して生き残ったベンチャーZMPの両社が、ここで空飛ぶロボットであるドローンを焦点として1つの会社を作ったことにはある種の感慨を覚える。
エアロセンスCTOの佐部浩太郎氏佐部氏の略歴ZMPの事業領域ZMPはここのところDeNAと合弁で2020年の自動運転を目標にした「ロボットタクシー株式会社」を設立したり、名古屋大学によるオープンソースの自動運転用ソフトウェア「Autoware」を搭載した自動運転カーを受注開始したり、GPUのNVIDIAとも協力してディープラーニングを使った画像認識技術を研究したりと、矢継ぎ早にリリースを出している。また物流分野用の台車ロボット「CarriRo(キャリロ)」も受注開始するなど、これまで地道に培ってきたロボット技術を水平展開し始めている。
ロボット技術はもともと汎用性の高い技術である。活用できるかどうかは組み合わせ次第だ。そしてビジネスとして展開するにはまた別のノウハウがいる。なんにしても、これまでの積み重ねが開き始めていると評価すべきだろう。
ZMPによる機械学習とGPUを使った歩行者検出【ZMPの物流支援ロボット「CarriRo(キャリロ)」】さて、既にエアロセンスの事業については各媒体で報道が行なわれているが、本稿ではドローンビジネスと技術開発の動向も若干交えつつ、改めて紹介しておきたい。最近、ホビー用途のドローンは規制が厳しくなる一方で、都内では広い私有地でもない限り、まずほとんどの場所で飛ばせなくなっている。ドローンの多くは空撮用カメラとして用いられており、きちんとした映像を撮るためにはそれなりに高度なノウハウが必要であるものの、ドローンがありふれたものになるにつれ、撮影ビジネスもそれ単品だけではアピールしにくくなくなりつつある。一方、土木・点検その他のドローンビジネスはまだまだ始まったばかりで、開拓余地が大きい。
今回のエアロセンスのビジネスモデルは、完全自律飛行するドローンと、クラウドでの画像処理・管理技術を組み合わせて、2Dあるいは3Dデータなど法人向けソリューションを提供しようというものだ。人が遠隔操作するのではなく、ワンボタンで自動でパスを生成し、ドローンが飛び、撮影計測を行ない、帰還することができるシステムを目指すという。データはクラウドで管理・処理される。事業領域は、建築・点検、土木・鉱業、監視・警備、農業、物流・運搬だ。
エアロセンスの事業領域は建築、土木、農業などドローンとクラウドプラットフォームを組み合わせて産業用途を開拓するただ、同社が会見で紹介した実例の1つであるドローンを使った現況把握や自動測量ソリューションそれ自体は目新しいものではなく、ライバル企業が既に先行している。例えば今年行なわれた「国際ドローン展」でも、コマツが、2015年2月から展開するICT建機や図面・施工データなどを繋げる「SMART CONSTURUCTION」の一環として、SKY CATCHのドローンとクラウドプラットフォー「KomConnect」を使った自動測量ソリューションをアピールしていた。なおコマツは同じく今年2月に、ZMPに対して出資を行なっている。建設・鉱山機械の無人化・自動運転化が目標だ。
コマツ「SMART CONSTURUCTION」による現況把握SKY CATCHのドローンがエアロセンスのドローンに置き換えられるのかどうかは分からない。だがドローンを使って何をするにしても、土木・建設現場に入れるのならばその一部分でしかないわけで、どこまで食い込めるかが課題になる。ビジネスが成功するかどうかは、トータルソリューションの一部になった後の、使い勝手の良さやインターフェイス、そして営業力次第だろう。会見ではその辺りの詳細については触れられなかったが、ここにソニーモバイル、あるいはソニー本体の人材の力が注がれることになるのだろうと推測する。単に狭義の技術協力だけではなさそうだ。
エアロセンスの記者会見は2部構成で行なわれた。第1部の内容に関しては「AV Watch」ほか、さまざまな媒体でも取り上げられているのでそちらをご覧いただくとして、こちらで第2部の内容を付け加えてレポートしておきたい。