空飛ぶクルマ最新事情:SPAC上場で離陸する米国空飛ぶクルマビジネス
~北米ドローン・コンサルタント 小池良次~ コロナ禍を乗り越えて進む「空飛ぶクルマ」の開発競争 機体開発から運行モデルへと広がる欧米開発レース 2023年、日本で空飛ぶクルマがテイクオフ!その具体的なプランとは

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Jobyは世界最初の認定航空機を目指す

 21年2月24日、eVTOL開発競争のトップを走るJoby Aviation社はSPAC企業のRTP(Reinvent Technology Partners)の買収提案を受け入れ、ニューヨーク証券取引所(NYSE)に上場すると発表した。同IPOにより16億ドル(約1,700億円)の資金を調達する。

 SPACとは事業を持たず「将来、主に非公開の優良企業を買収する」目的で上場申請をした会社のこと。そのため「空箱上場」とか「宛名空白小切手上場」などと称されている。もちろん、どのような分野の企業を買収ターゲットにするかは事前に決めるが、具体的な企業などと事前に交渉することはできない。SPACは投資家保護の観点から2年以内に買収できなければ資金を返却し解散すること、買収企業が決まった時点で同意できない投資家からの買い戻し要求に応じる義務などが課されている。

空飛ぶクルマ最新事情:SPAC上場で離陸する米国空飛ぶクルマビジネス
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 Joby社は2024年にエアー・タクシー事業の開始を予定しており、企業評価額は66億ドル(約7,000億円)。これまでトヨタ自動車を含む機関投資家や企業から約9億1,000万ドルの資金調達を行っている。

 カリフォルニア州の実験場で1,000回以上の試験飛行を繰り返してきた同社は、米空軍がすすめる次世代航空機支援プログラム「Agility Prime※1 (アジリティ・プライム)」にも選ばれている。また、連邦航空局(FAA)は同社のJoby S4に対する航空機の認定(耐空証明および機体認証)を進めており、早ければ今年中に正式認可が下りると予想されている。実現すれば、Joby S4(5名乗り、最高時速200マイル、航続距離150マイル)は、正式に航空機として認められた世界最初のeVTOL(電動垂直離着陸機)となるだろう。

 既に従業員が700名を超える同社は、機体認証から製造認証へと視野を広げている。既にカリフォルニア州Marina市に5万5000平方スクエアー・フィートの組み立て工場を整備しており、今後は建設や資材調達、営業など旺盛な資金需要が予想される。今回のSPAC上場による大型資金調達は、こうした旺盛な事業拡張資金を確保する第一歩といえる。

※1:Agility Primeプログラムは、米軍が資金援助を行うとともに、空軍施設を使った技術支援やアドバイスなどを提供する。同プログラムでJoby社は空軍施設での試験飛行を開始している。