今こそ“有線イヤホン”で聴こう! ゼンハイザー渾身の新製品「IE 300」を試した - BCN+R

今こそ“有線イヤホン”で聴こう! ゼンハイザー渾身の新製品「IE 300」を試した - BCN+R

レビュー

今こそ“有線イヤホン”で聴こう! ゼンハイザー渾身の新製品「IE 300」を試した - BCN+R

2021/02/18 19:30

 ゼンハイザーは創業から75周年を迎えたドイツの老舗オーディオメーカーだ。ミュージシャンによる創作活動や放送局のブロードキャスティングを支えてきたマイクロフォンやワイヤレス会議システム等のプロフェッショナル向けオーディオ製品の開発により培った技術は、音楽の原音を忠実に再現することが求められるコンシューマーオーディオ製品の土台も担っている。日本にも世代を超えて同社のオーディオ用ヘッドホン・イヤホンをこよなく愛する多くのユーザーがいる。

ワイヤレスイヤホンにない有線イヤホンのメリット

 年初に発売されたIE 300はゼンハイザーのオーディオファイル向け高音質イヤホンの新しいスタンダードモデルだ。新開発のXWB(Extra Wide Band)トランスデューサーを載せた、有線接続のイヤホンにはゼンハイザーが誇る最先端と伝統的な高音質化技術が惜しみなく投入されている。  左右独立スタイルの“完全ワイヤレスイヤホン”が注目されている今、なぜゼンハイザーは有線イヤホンの新製品を発売するのだろうかと不思議に思うかもしれない。実は有線イヤホンの高音質なハイエンドモデルには熱心なオーディオファンが絶えず熱い視線を注いでいる。本機も価格はオープンながら、本稿執筆時の2021年2月中旬時点では実勢価格が3万円台後半になるハイエンド機だ。 ワイヤレスイヤホンに比べて有線イヤホンがすぐれている点も数多くある。一つは充電の手間が要らず、使いたい時に音楽プレーヤーに接続してすぐに楽しめることだ。近頃はAndroid OSを搭載するスマホを中心に3.5mmイヤホンジャックが復活しつつある。プラグをジャックに挿してすぐに使える手軽さもいい。  ワイヤレスイヤホンの場合、接続したスマホから送られてくる音声信号に遅延が発生する場合がある。動画再生の場合は音声が遅延すると話者の口元の動きとセリフがずれてストレスに感じられてしまう。またモバイルゲームの場合は音声の遅延がプレイの命運に関わることもある。用途に合わせて有線・無線のイヤホンを使い分けながら楽しみたい。

広帯域をカバーするサウンド。声の再現力が特に高い

 ゼンハイザーのIE 300には幅広い帯域の音を再現できる7mm口径のXWBトランスデューサー(振動板)が搭載されている。元は上位機のIE 800にも搭載されているXWBトランスデューサーが持つナチュラルバランスなサウンドの再現力を受け継ぎながら、スタンダードモデルであるIE 300に仕様に最適化した。ゼンハイザーがオーディオファイル向けのヘッドホンやイヤホンの主要なモデルに採用してきたヘルムホルツ共鳴器も搭載したことで、特に高域のにごりが少ない艶やかなサウンドに仕上げている。  ピアノや弦楽器の音色がとても素直だ。クラシックやジャズなどアコースティック楽器による演奏に群を抜くリアリティを感じることができる。コンパクトな筐体から想像もできないほど、本機が再現できる音場が広い。大編成のオーケストラによる演奏はホールの臨場感までもが伝わってくるし、ロックのライブ録音ものの作品を聴くと鳥肌が立ってくるような緊張感が味わえる。 そして特筆すべきはやはり、IE 300が「声の再現力」に長けたイヤホンであるということだ。好みのボーカリストの作品を聴くと、耳元で声が聞こえるような解像度の高さと没入感にのめり込んでしまう。  本機の特徴が活きる利用シーンは音楽リスニングに限らない。オンライン会議の音声もまたとても聴きやすく、リモートワークを円滑に進めるための万能イヤホンとして本機をぜひ携えたくなる。本機のケーブルにはマイクが搭載されていないが、MMCXという汎用性の高い端子をイヤホン本体側に設けてケーブル交換ができる仕様になっている。  さまざまなメーカーが発売するマイク付きリモコンを搭載するケーブルに交換するとPCやタブレットなどに装着してオンライン会議等にも利用しやすくなる。有線接続なのでやはりワイヤレスイヤホンと違って“電池切れ”を心配せずに使えるし、イヤホン本体が軽く装着感が高いIE 300は長時間身に着けていても疲れにくいところも良かった。ゼンハイザーのIE 300はビジネスからエンターテインメントまで、あらゆる生活シーンで使い倒せるオールラウンダーになってくれるイヤホンだ。きっと満足できる買い物になるだろう。(フリーライター・山本敦)