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11/03/2022
[ロンドン発]英国でロンドン・ヒースロー空港に次いで2番目に忙しいロンドン・ガトウィック空港で19日午後9時すぎ、ドローン(無人航空機)2機が境界フェンスを越えて飛行しているのが目撃され、滑走路が閉鎖されました。
20日午前3時すぎに滑走路はいったん再開されたものの、45分後に再びドローンが目撃されたため、再び閉鎖されました。地元警察はテロではなく、意図的な妨害とみてドローンの操縦者を捜索しています。流れ弾の巻き添えを避けるため、ドローンを撃ち落とす手法は採れないそうです。
英BBC放送によると、19日だけで1万人が影響を受け、20日は760便計11万人がガトウィック空港を発着する予定で、ロンドンの空は大きく乱れています。
同空港に着陸する予定だった旅客機はヒースロー空港やロンドン・ルートン空港、バーミンガム空港のほか、パリやアムステルダムの空港に振り替えられています。
影響を受けた乗客は空港の床で寝たり、機内に閉じ込められたりし、食事もなく、高額なタクシー代を負担することになり、怒り心頭に発しています。
英民間航空局(CAA)「異常接近調査委員会(UK Airprox Board)」の報告を見てみると、2013年まで3年連続でゼロだったドローンと旅客機のニアミス事故は激増しており、今年は120件に達しています。衝突する危険性があった「リスクA」の報告は14年以降で実に計97件にものぼっています。
ドローンが小さすぎて現在、使用されている航空管制のレーダーでは発見しにくく、空港の境界内への侵入を防ぐのが非常に難しいからです。
ドローンが旅客機のエンジンや操縦席の窓ガラスに衝突すれば重大事故につながる恐れがあります。またドローンに使われているリチウム電池が衝突によって発火する危険もあります。
15年1月、米ホワイトハウスの芝生に中国製「ファントム2」が墜落する事故がありました。2月には夜間、パリのエリゼ宮、在仏米国大使館、エッフェル塔、アンヴァリッド軍事博物館、幹線道路の上空を飛行するドローンが目撃されています。
ホワイトハウスでの墜落事件のあと、中国メーカーは、ハードウェア化したソフトウェアの飛行禁止区域にワシントンを加え、衛星測位システム(GPS)と連動させてドローンが入れないようにする対策を講じました。
フランスでは14年10月初旬から11月末にかけ、19カ所の原発のうち13カ所の上空をドローンが飛行したことが確認されています。ドローンによる侵入は夜を狙って行われ、入念に計画されていました。
ドローンで原発内を偵察すれば、写真や動画を撮影してテロ準備のための情報が収集できます。原発施設に侵入したテロ部隊を上空から支援するため、武器を運搬したり、電源や通信ネットワークに爆弾を落としたりすることも可能です。
原子炉より建造物が脆弱な使用済み核燃料貯蔵庫に爆弾を落とすことも考えられます。
ドローンの大半は50センチ未満で、最大でも2メートル。この大きさでは通常レーダーで探知するのは難しく、実際、フランスの原発では警備員が肉眼でドローンの侵入を確認しています。フランス軍はドローンのような小さな飛行物体でも確認できるレーダーを原発に配置しました。
ドローンを発見したら撃ち落とす許可を与えられていますが、非常に高い射撃技術が求められます。また、原発施設の上空を飛行中はドローンを撃ち落とすことはできません。墜落して被害を大きくするかもしれないからです。
妨害電波を発してドローンを間違った方向に誘導する方法は原子炉を誤作動させる危険性があります。
原発や政府中枢機関を狙うドローンによるテロを防ぐ最も有効な対策は今のところ、小型飛行物体でも探知できる高性能レーダーでドローンの侵入を早期発見し、インターセプト・ドローンを飛ばして追跡、上から捕縛縄を落してプロペラに絡めて墜落させる方法だそうです。
米国やフランスでもドローンと旅客機のニアミスが相次ぎ、米連邦航空局(FAA)では、250グラム以上25キロ未満のドローンについて登録制度を導入しました。13歳以上にならなければドローンを所有できず、登録料として5ドルが必要です。
英国では、旅客機との衝突やニアミスを引き起こしかねない空港周辺ではドローンを飛行させることは禁止されています。空港周辺1キロメートル以内でドローンを飛ばした場合、最大5年間の禁固刑が科されます。
ドローンが操縦者の視界から消える約500メートル(水平距離)以上離れた場所や、垂直距離で約122メートル以上の上空を飛行させるのも禁じられています。
ドローンがカメラを搭載している場合、人間や乗り物、建物、構造物から少なくとも約50メートルの距離をとらなければならず、スポーツイベントやコンサートなど混雑地域や集団の約150メートル以内に接近してはいけません。
商用利用の場合、英国でも運用者は英民間航空局(CAA)の許可が必要になりました。
ロンドンの市街地でドローンを飛ばすことは許されていませんが、動画投稿サイト、ユーチューブを見れば、飛行禁止区域を飛んでいるドローンから撮影した動画がたくさん出てきます。
日本でもドローンをめぐるトラブルが相次いでいます。
2014年4月、カメラを積んで夜景を撮影していたドローンが名古屋栄・テレビ塔周辺の繁華街で墜落
同年11月、湘南国際マラソンで大会協賛企業のスタッフが空撮に利用していたドローン(重さ約4キロ)が約2.5~3メートルの高さから落下し、スタッフが顔にけが
15年1月、琉球新報社敷地内での記者2人による基礎訓練中、何らかの理由でドローンが制御を失い、那覇新港方面に飛行して行方不明となる
同年4月、首相官邸の屋上にドローンが落下。威力業務妨害の疑いで40代の男を逮捕。機体にはプラスチック容器が取り付けられ、微量の放射性セシウムを検出
国土交通省に報告のあったドローン事故は15年度12件、16年度55件、17年度63件、18年度37件と急増しています。18年4月6日には、羽田空港に着陸進入中の旅客機が無人航空機らしき黒色で直径約2メートルの飛行物体を視認したとの報告もあります。
日本では15年9月の航空法改正で、ドローンについて
(1)空港周辺、人や住宅が密集する地域の上空、150メートル以上の高さの空域では飛行させない
(2)日中に飛行させる
(3)目視範囲内で飛行させる
(4)第三者や車、建物との距離は30メール以上保つ
(5)多数の人が集まる催し場所の上空で飛行させない
(6)危険物を輸送しない
(7)物を投下しない
――ことが定められました。
首相官邸や国会、皇居、大使館、原発など重要施設の外側300メートルを飛行禁止区域に設定し、操縦者が退去命令に従わない場合は警察官がドローンを破壊できるようになりました。違反者には1年以下の懲役または50万円以下の罰金が科されます。
ドローンの商用利用への期待と可能性が膨らむ中、航空の安全を守り、テロや犯罪への悪用を防ぐため、どんな規制が効果的なのか、よりきめ細かい議論と検討、包括的な政策が求められています。
英企業ブライター・サーベイランス・システムなど3社は15年9月、ドローンを探知して墜落させるシステム(AUDS)を開発しました。
どんな大きさのドローンでも10キロメートル内に侵入してくると、高性能レーダーが直ちに探知してカメラが追跡を開始。危険エリアに入ってくる前に妨害シグナルをドローンに向けて発信し、墜落させる防御システムです。
要撃の所要時間は8~15秒。このシステムは米連邦航空局に採用され、米国の空港で試験運用されています。
高性能のドローンが誰にでも簡単に入手できるようになった今、テロ対策も含め各空港にドローン要撃システムの導入が必要になったことをガトウィック空港でのドローン騒動は物語っています。
(おわり)