【鳥居一豊の「良作×良品」】ヘッドフォンのバランス接続を身近に。フォステクス「HP-A4BL」 - AV Watch

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リマスターで復活したロジャー・ウォーターズ「Amused to Death」

2月に発売されたBD版「ロジャー・ウォーターズ The Wall」

さて、試聴する良作としては、ロジャー・ウォーターズの「Amused to Death」を選んだ。「The Wall」など、ピンク・フロイドの黄金期の中心人物であったロジャー・ウォーターズの3枚目のアルバムで、発売は1992年。「ファイナル・カット」の後でピンク・フロイドを脱退した後に発表されたものだ。

昨年は、筆者のようなピンク・フロイド好きにはなかなかうれしい1年で、本作「Amused to Death」のリマスター版の発売、そしてDSD 2.8MHzでのハイレゾ音源の発売があり、また、「ロジャー・ウォーターズ The Wall」のコンサートを収録したCDおよびBDソフトも発売された。BD版は映像も素晴らしいが音声はドルビー・アトモスとなっていて国内版も2月に発売されるが、待ちきれないので輸入盤を購入したほど。

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試聴で使った音源は、moraで配信されている2015リマスター版のDSD 2.8MHzを使用している。再生はWindows 10のデスクトップPCを使い、foobar2000で行っている。HP-A4BLのドライバーはホームページで入手してインストールした。最新版のVersion2.0.7はWindows 10対応済みとなっている。

moraで「Amused to DeathDSD版」を購入

ヘッドフォンは、手持ちのゼンハイザー「HD800」を使用。純正のバランスケーブルを使用してHP-A4BLと接続している。今回はバランス接続での試聴を中心に行なっている。

試聴では、手持ちのゼンハイザー「HD800」と組み合わせて聴いた。接続ケーブルはゼンハイザー純正のバランス接続ケーブルとしている

準備が整ったところで、さっそく聴いて行こう。1曲目はインストゥルメンタルの「The Ballad of Bill Hubbard」。ロジャー・ウォーターズのソロ作なので、ピンクフロイドの他のメンバーは参加してないが、メロディアスなイントロや人の声や犬の吠える音など、さまざまな効果音を散りばめた曲はピンクフロイドのアルバムのひとつと勘違いしそうな出来だ。

HP-A4BLは、音色としては忠実度の高い再現で、ひとつひとつの音を粒立ち良く描いていくタイプだ。このあたりはベースとなったHP-A4にも通じる部分だ。音源がDSDでしかもバランス出力で聴いていることもあり、チャンネルセパレーションがより明瞭になっていて、ギターの音が浮かび上がるような空間感の豊かな再生音はなかなかの臨場感だ。

曲の終わりで、アナログ放送のチャンネルを切り替えたようなノイズが入り、唐突に2曲目の「What God Wants,Part I」が始まる。本作は、テレビで放送される主に戦争を題材としたニュースやドキュメントを見ている体裁で、現代の戦争(というより戦争を娯楽として見ている現代人)への風刺をテーマとしたものだ。そのため、曲と曲の合間には、チャンネルをザッピングしているようなさまざまな番組の音が乱雑に挿入されるのだ。このあたりの効果音混じりのエフェクトも、より雑味のない明瞭な再現となっていて、ヘッドフォンながら音場感が豊かに出る再現とあいまってなかなかに映画的な音響だ。

曲はジェフ・ベックによるギターもなかなかに迫力があり、メロディアスながらも迫力のある調子だ。ドラムのアタックが強く感じられ、胸に直接刺さるようなキレ味が出ている。後半ではライブを思わせる歓声も混じり、音は混濁しがちになるが、HP-A4BLでの再生は実に鮮明で、荒々しさをストレートに伝えてくる。クライマックスでまたもや曲は唐突に切り替わる。