「Beats Flex ー fragment designスペシャルエディション」 Apple公式サイトで販売開始
11/03/2022
文●青山祐介/構成●編集部
講師●田川哲也/ドローンにも使われている、アイペックスコネクターの設計を本職とするドローンエンジニア。まだドローンを「マルチコプター」と呼んでいた6年ほど前から、空撮用ドローンを製作し始める。2014 年からレーシングドローンの製作も手掛ける。Facebookグループ「 U199 ドローンクラブ」の発起人、管理人。2016 年 ドバイ国際大会日本代表チーム エンジニア。現在 DMM RAIDEN RACING チーム エンジニア。
ドローンが実用化されたきっかけのひとつに“リポバッテリー”の登場が挙げられます。現在、ドローンで広く使われているリポバッテリーは他の充電式電池に比べてエネルギー密度が高く、メモリー効果※がないため継ぎ足し充電ができるメリットがあり、スマートフォンやパソコンなど多くの電子機器に使われています。
特にエネルギー密度の高さ、つまり同じ体積、質量の他の形式の電池に比べて、保持できるエネルギーが大きいという特性は、少しでも電池の重量を軽くしたい航空機としてのドローンに最適なバッテリーだと言えます。
マイクロドローンに使われるリポバッテリーは、おもに容量が200〜400mAh程度の1〜3S(セル)というとても小さなものです。バッテリーに付いているコネクタも非常に小型のもので、2S以上のものではXT30。1Sではピン間が2.0mmピッチのJST PHや1.25mmピッチのMOLEX PicoBladeが使われています。いずれも1Sバッテリーに付いている小型のコネクタは、形状が似ているためうっかり異なるコネクタ同士を接続してしまいがちですが、形状が合わないとピンやハウジングを傷めてしまうため注意しましょう。
リポバッテリーは現時点においてドローンに使うのに最適な電池です。ただし、きちんと電圧を管理しながら使わないと電池として使えなくなってしまいやすいというデメリットがあります。さらに充電方法を間違えると発熱、発火、炎上する可能性があるため、取り扱いには充分な注意が必要です。
リポバッテリーの公称電圧は1S(乾電池1本に相当)あたり3.7Vで、最近登場してきた「HV」と表されるハイボルテージ仕様の場合は3.85Vです。この公称電圧を中心に、放電電圧は3.0V、充電電圧は4.2V(HVは4.35V)の範囲で放電、充電を行う必要があります。この4.2〜3.0Vの範囲を超えて充電や放電を行うと、バッテリーの性能が著しく低下して事実上使えなくなってしまいます。
リポバッテリーを保管する場合は、満充電でも使い切った状態でもなく、5割くらい使った3.8V程度で保管するといいでしょう。また、マイクロドローン用のバッテリーはとても小さいこともあり、乾電池のように雑に扱いがちです。しかし、多くのマイクロドローンで使われるリポバッテリーはレトルト食品等で使われているアルミパウチでパックされているだけ。そのため簡単に傷つきやすく、この傷が原因で内部の電解液が漏れ、発火炎上につながる危険性があります。リポバッテリーは専用のバッグやケースに入れて、直射日光を避け、室温で保管しましょう。
リポバッテリーの発火や炎上が起こりやすいのは充電のときです。特に充電電圧は決して4.2Vを超えないようにしましょう。充電器に粗悪品を使うと、この電圧を超えてしまうこともありますから、なるべく信頼性の高いものを使うことをお勧めします。
さらにリポバッテリーの充電中は、バッテリーの周囲に燃えやすいものを置かない。そして、なるべくバッテリーから目を離さないようにしましょう。できれば発火してしまった場合に備えて金属や陶磁器のトレーや容器の中に置いて、充電するといいでしょう。ドローンの墜落などで衝撃などのダメージを与えてしまったバッテリーは、充電中に変なにおいがしたり、急に発熱したりすることがあります。そんなときには、速やかに充電を中止しましょう。
▲電圧は水鉄砲で言うと、水を押し出す力。電流はそれによって出た水の量。抵抗は水が外に出るのを押さえる力、つまり水鉄砲で言うと水の出口の大きさがそれにあたる。
▲水を押し出す力が強ければ、水が多く流れる。電圧と電流の関係もこれと同じ。抵抗の大小によっても電流の量は変わる。
mAh(ミリ・アンペア・アワー)どれだけの電流を1時間流すことができるかを示す単位。数値が増えればバッテリーにためる電気の量が大きく、一度に充電できる量が多くなる。
V(ボルト)電圧のこと。電気を押し出す力。
S(セル)電池の構成単位のこと(次ページで解説)。
HV(ハイボルテージ)通常よりも電圧の高いバッテリーのこと。
C(シー)Capacity(容量)のC。バッテリーの充放電能力を表した数字。「30C/60C」の記載は常時30C。瞬間最大値60Cという意味。一般的に放電容量が高いほど、飛行のレスポンスがよくなる。主に充電の際に意識すべき単位だが、詳しくは次号に解説する。
DJIの空撮機に使われるバッテリー(左下写真)は専用のケースに収納されているが、マイクロドローンで使われるリポバッテリーはセルがむき出しの状態。DJIのバッテリーは充電の際、過充電を防いだり、セル間の電圧のバランスを自動で揃える機能が備わっているが、マイクロドローンのバッテリーにはそうした機能はない。
セルとは電池の構成単位こと(1S、2Sと表記される)。マイクロドローンでは3セルまでが主流だが、大型ドローンになると6セルや12セルのバッテリーを採用するものもある。リポバッテリーでは複数のセルを組み合わせることで大電力を実現している。
1セルあたり、電圧は3.7V(最大4.2V)で、4セルなら 3.7V×4=14.8V がバッテリー全体の電圧となる。HV仕様だと3.85V(最大4.35V)。
XT30コネクタ
●主な採用ドローン:BETAFPV Brushless X Dronesシリーズ、Vespa NanoDrone他
ラジコンの動力用コネクタとして有名なXT60の小形版。コネクタの許容電流値が瞬間で30アンペアです。上記に記載したコネクタの許容電流値はどれも数アンペアレベル。マイクロドローンではブラシレスモータ搭載の2S仕様のハイパワードローンに使われる。
▲バッテリー側(左)、ドローン側(右)
JST PHコネクタ(2.0mmピッチ)
●主な採用ドローン:Blade Inductrixシリーズ他
TinyWhoop系の大電流(HV仕様含む)タイプの1セル仕様のバッテリーに現在主流となっているコネクタ。
▲バッテリー側(左)、ドローン側(右)
MOLEX PicoBladeコネクタ(1.25mmピッチ)
●主な採用ドローン:BETAFPV Brushed Whoop Dronesシリーズ
Blade Inductrixのブラシモータに使われているコネクタ。PHコネクタに比べて、ドローン側の線が細く電流が流れないのでモータの進化によって、より多くの電流を要求する最近のマイクロドローンではあまり使われなくなった。
▲バッテリー側(左)、ドローン側(右)
◉注意点一部の充電器で採用されている1.5㎜ピッチのコネクタに無理に挿すと入ってしまうが、コネクタにダメージが生じてバッテリーが使用できなくなってしまうので要注意! PicoBlade1.25㎜コネクタはロック孔が中央に1つ、1.5㎜ピッチのコネクタはロック孔が2つある。充電の際には、ロック孔をよく見て使用したい。
リポバッテリーは4.2V以上の電圧になるまで充電すると過充電。3.0Vを下回る電圧になるまで飛ばさない。バッテリーが損傷し、膨張する。過充電やケーブル断線、衝撃などによるセルの損傷などは最悪の場合、発火のおそれもあるため、取り扱いには注意が必要。完全放電させてしまうとバッテリーを再度使うことができなくなることもあるので注意。
左はBETAFPV純正の1セルバッテリー用リポチェッカー(8.99ドル)。右はGフォースが発売している1〜6セルまでのバッテリーの電圧を確認できるGフォースのLiPo ANALYZER(2000円)。バッテリーを接続するだけでセル間の電圧差を修正するバランサー機能搭載する。
持ち運びや保管はセーフティーバッグに入れておくのがおすすめ。耐熱素材で万が一の発火の際にも備えられる。アマゾンなどで購入できる。保管温度は10〜30℃が適温。直射日光を避けて室内の涼しいところにおいておきたい。
①外観に痛みがないバッテリーに関しては、コネクタを保護したうえで、家電量販店に設置してあるリチウムイオンバッテリー回収ボックスにて回収できないか、お店に確認。
②ドローン練習場等には回収BOXが設置されている場所もある。①同様にコネクタ部を保護すること。
③バッテリー外装に傷がある等で①②の方法で回収ができない場合は、自宅でおおよそ5%の食塩水をバケツに作り、1週間くらい浸漬して、完全に放電。その後 自治体の指示に従いゴミとして廃棄する。
●ビデオSALON2019年7月号より転載