日本初「小型観光船の無人運航」実現へ 離着桟も避航も自動 離島航路の救世主となるか

日本初「小型観光船の無人運航」実現へ 離着桟も避航も自動 離島航路の救世主となるか

船上に搭載されたハイテク機器

実証実験に使用された「シーフレンドZERO」(深水千翔撮影)。

 日本財団が約88億円の事業費を投じて実施する無人運航船開発プロジェクト「MEGURI2040」の実証実験がいよいよスタートした。同財団は無人運航船がもたらす経済的効果を2040年段階で年間1兆円と試算。2021年度中に既存航路で無人航行を世界で初めて実現するため、2020年2月から5つのコンソーシアムに対して総額約74億円の支援を行っている。このうち丸紅、トライアングル、三井E&S造船、神奈川県横須賀市で組成するコンソーシアム「無人運航船@猿島」が2022年1月11日、猿島航路で世界初となる小型観光船による無人運航を成功させた。【触ってない!】無人運航船 ブリッジの様子ほか 写真で見る「YOKOSUKA軍港めぐり」などを手掛けるトライアングルの小型観光船「シーフレンドZERO」(19総トン)に、三井E&S造船が開発を進めている自律操船技術を適用。同社の統合操船装置(MMS)や、自動運航システムを支えるセンサーとして画像解析で小型船を検出するカメラ3台、GNSS(衛星測位システム)、AIS(船舶自動識別装置)などを搭載したほか、実証実験ではさらに離着桟センサーやLiDAR(レーザーレーダー)も設置している。 丸紅の武智康祐執行役員(航空・船舶本部長)は「当コンソーシアムの特徴として『小型船』『レトロフィット』の2点が上げられる。既存の小型船を、手軽にコストを抑えて改修を行うことで、無人運航が幅広く可能になることを目指し、技術の開発と検証を行ってきた」と説明をする。 今回の実証実験で「シーフレンドZERO」は、離着桟や航行、避航といった一連の動作を全て操舵室前の自律化ユニットが自動で行っている。 同船は操舵室のスロットルを自動で動かし新三笠桟橋を離桟。センサーから得られた周囲のデータを分析し障害物検知システムが航路上の他船を検知すると、AI(人工知能)の分析を基に自律操船システムが針路を変更し前方の船を避けた。目的地の猿島に近づくと自船の位置や速度、周囲の風向・風速を把握しながら減速し、スラスターを使って着桟した。 三井E&S造船の船津 勇社長は実証実験の成功を受け「非常に小さい船ではあるが、桟橋を離れるところから、着けるところまで、全て自動化・無人化できたことは技術的にかなり高いレベルになっているのではないか」と述べた。

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