Vol.157 LUMIXフルサイズボックススタイルカメラ「BS1H」最速レビュー。気になるS1Hとの違いを解説[OnGoing Re:View] - PRONEWS : デジタル映像制作Webマガジン

Vol.157 LUMIXフルサイズボックススタイルカメラ「BS1H」最速レビュー。気になるS1Hとの違いを解説[OnGoing Re:View] - PRONEWS : デジタル映像制作Webマガジン

BS1Hの概要

BS1Hの概略スペックは下記の通りである。

撮像・記録に関する点はS1Hと同じだがBS1Hについて詳細を書く前にS1H、BGH1について触れておきたい。

S1Hは広いダイナイックレンジ、正確な色再現、無制限記録、DCI4K撮影、優れた高感度耐性、Blackmagic RAW/ProResRAW外部収録対応など単なる動画も撮れるミラーレスカメラとは一線を画す存在であり、Netflixの認定を受けている唯一のフルサイズミラーレスカメラである。BS1Hの映像品質はこのS1Hそのものである(なお、BGH1もNetflixの認定を受けている唯一のマイクロフォーサーズカメラである)。

BGH1はボックス型のカメラであり、スチル機能を省き、動画撮影・配信に特化したカメラであり2020年11月に発売された。長距離の映像伝送や外部コトントロールができるようLAN端子やSDI出力端子などを搭載しておりミラーレスカメラとは異なる機能を搭載している。BS1Hの筐体はこのBGH1そのものである(BGH1は高感度に定評があるLUMIX GH5Sと同じ画質である)。

先にも述べたようにBS1HはLUMIX S1Hのボックス型カメラである。ミラーレスカメラ(と表現するにはかなり動画に特化した)S1HとGH5S、ボックス型のBGH1のマトリクスを埋めるパーツがBS1Hである。BGH1の撮影、配信の利便性をフルサイズカメラにしたものがBS1Hだ。

BS1Hの見た目はほとんどBGH1である。外装的にはロックボタンやファンクションボタンの追加、レンズのリリースボタンの位置変更など細かい部分が異なるが、マウントが異なる事を除けばぱっと見で違いは分かりにくい。

ところがボディキャップを開けるとその違いは歴然である。

マイクロフォーサーズのBGH1とLマウント(フルサイズ)機の比較なのでセンサーサイズが違うのは当然としても、同じボディサイズなのは不思議な感覚である。これで6Kを含む無制限記録ができるというから驚きである。

見た目からして違うのは当然だが、基本性能の多くはS1Hから踏襲されているが、いくつか機能的な側面でS1Hと異なる点がある。

見ての通りステータス表示系に関するものは一切なく、電源、ネットワークの状態はLEDの点灯で判断することになる。PCを使ってコントロールを行うのでなければ外部モニターは必須となる。

全面にはカスタマイズが可能なボタンが4つ配置されているため、これらを自分好みにカスタマイズすることになるがミラーレス一眼のわかりやすい操作系に比べると操作系が体に染み付くまでには少々時間がかかるかと思う。

また、EVFやメカシャッター、手ぶれ補正の類ももちろん搭載されていない。「全部載せ」のLUMIX S1Hに比べるとかなり思い切った仕様である。屋外での手持ち撮影をしたいのであれば、ハンドルやジンバル場合によっては外付けEVFなどそれなりの周辺機器を用意する必要がある。

S1HにあってBS1Hにないものという少々意地悪な書き方をしたが、BS1HはRun&Gun Shootが得意なS1Hの代わりになるカメラではない。映像の品質自体はS1Hそのものなのだが、S1Hとは使われる用途が根本的に異なっていることを念頭においた方が良い。

なお、実勢価格は税込404,000円となっている。S1Hよりも安い価格設定ではあるが上記の様に省かれている機能も多い。この価格を安いと感じるか高いと感じるかは以降の「S1HになくてBS1Hにあるもの」に価値を見出せるか次第だと思う。

背面の端子類を見るとLAN端子、SDI出力端子、Genlock端子、TC IN/OUT端子、大容量バッテリーと、いわゆるミラーレスカメラには搭載されていないものがBS1Hには搭載されている。

LAN端子はPoE+対応のネットワーク機器に接続すればLAN経由で電源の供給が可能となる。

電源供給はスイッチングハブの電力供給能力次第だが、40W対応のスイッチングハブではBS1HとBGH1の2台を接続しても電源警告は一切出なかった。

なお、筆者が気に入っている機能の一つがRTP/RTSPでの配信機能だ。これはLAN経由での各種配信が可能となる機能である。同機能に近いものがGH5 IIで搭載されているが、こちらはLANを使用してRTP/RTSPのサーバとして機能する。つまり複数台のBS1HやBGH1をPC上のRTP/RTSPに対応したソフトからアクセスすることでカメラの映像を高画質に配信できるものだ。

Genlock、TC IN/OUTがあるため複数台のカメラの同期が取りやすいのもこのカメラの特徴である。

PoE+対応の有線LAN接続を行えばそもそもバッテリー駆動自体が不要であるが、LANを使用しないバッテリー駆動時の収録では大容量バッテリーによる長時間記録が可能である。

SDI出力はFHDまでの解像度となっているがHDMI出力と併せて2系統の映像が出力できるようになっている。

LANケーブル同様に長距離伝送が可能であるためカメラから離れた位置でのモニタリングやコントロールを行うのに最適なソリューションであると言える。

つまり、このカメラはカメラ本体を触って操作をするというよりも、PCを使って複数台のBGH1/BS1Hをコントロールし撮影、配信することに主眼が置かれているカメラだと思う。この1年半で急激に需要が高まった映像配信だが、おそらくこの需要は今後もさらに伸びていく分野だ。個人でさえ複数台のカメラをライブ配信で使用する時代において複数台のカメラを一か所でコントロールできることの意義は大きいと思う。