「Beats Flex ー fragment designスペシャルエディション」 Apple公式サイトで販売開始
11/03/2022
レビュー
2021/09/26 18:30
遅ればせながらTWSを導入した。左右分離型の完全ワイヤレスイヤホンだ。True Wireless Stereoを略してTWSと言うらしい。ワイヤレスだから音が悪いだの、すぐ耳から落ちて行方不明になるだの、電池が持たないだの、耳からうどんを垂らしているようだの、そもそも高すぎるだのと、いろいろ理由をつけては避けてきた。しかし、市場はこの3年の間に2.5倍に成長し、価格もこなれてきた。ノイズキャンセル機能付きで1万円を切る製品も登場し始め、重い腰を上げることした。 TWSといえば、今とてもホットな市場だ。量販店に足を運べば、いくつものショーケースに、あふれんばかりの製品がこれでもと並び、何を選んでいいか途方に暮れる。BCNランキングで集計すると、3年前の2018年8月、参入メーカーは45社、ラインアップはわずか69製品に過ぎなかった。この8月では132社462製品まで急拡大。まさに百花繚乱の状態だ。最も売れているのは言わずと知れたアップルのAirPodsシリーズ。最近でこそ競合の増加でシェアは2割を切っているものの、依然としてトップを爆走している。 購入したのはアンカーのSoundcore Life P3。8月に出たばかりの新製品だ。ノイズキャンセル機能付きで、単体で連続6時間使用できる。ワイヤレス充電に対応しIPX5の防水で税込み8000円程。Air Pods Proのおよそ3分の1で、とにかくコスパ重視の選択だ。5色あるカラバリから選んだのは黒。なぜか一番安かった。Air Podsシリーズに似た形状で、さしずめ黒うどん。こいつを1週間ほど使ってみた。すると、なぜTWSがこれほど売れているのか、少しわかった気がした。まず感じたのはマスクとの相性の良さだ。マスクをした状態で有線のイヤホンを付けると、いろいろとややこしい。 マスクをしてイヤホンを付けると、いざマスクを外すときに線が絡まる。かといって、イヤホン、マスクの順番でつけると、今度はイヤホンを外すときにまた線が絡まる。煩わしいことこの上ない。ワイヤレスならこの煩わしさから解放される。ケースを含めても小さいので持ち運びが楽だ。線がないため、何かに絡まることもなくコンパクトにまとまる。テレワークにつきもののオンライン会議などでも活躍する。PCとワイヤレスで接続して使えるため使用中も自由に動けて楽だ。多少端末から離れても利用できる。PCでYouTubeを見ているときに、音を聴きながらトイレに入っても、狭い我が家なら何とか継続して音を聞き続けることが可能だった。ワイヤレスであることの利点は、実際に使ってみると結構大きい。 そして、何より素晴らしいのは充電方式だ。おそらくほとんどすべてのTWSが採用している、ケースにもバッテリーを仕込むスタイル。使い終わってケースに収納すれば、本体に勝手に充電される。単体だけではすぐになくしてしまいそうなTWSだが、ケースにしまうことで紛失も避けられる。一石二鳥だ。もちろんケースの充電が必要だが、毎回充電する必要はない。身に着けるデバイスといえば、スマートウォッチもあるが、こちらはあまり普及している感じがしない。やはり充電が面倒でスマートではない点がネックになっているように思う。その点TWSの仕組みは秀逸だ。 TWSだけの話ではないが、ノイズキャンセル機能にも発見があった。一般に、飛行機や電車などの乗り物に乗っている際や騒がしい場所でも静かに音楽を楽しむことができる機能だと理解されている。それはその通りなのだが、もう一つ大きな利点があった。歩行時の静かさだ。ノイズキャンセル機能がない普通のカナル式イヤホンを付けて歩くと、どうしても自分の足音が体内を伝って聴こえてしまう。歩いているうちにだいぶ慣れるが、煩わしいノイズの筆頭だ。これがノイズキャンセル機能でかなり低減される。ずいぶん快適に音楽を楽しめるようになった。 もちろんデメリットがないわけではない。まず耳から落としてなくしやすいこと。JRの駅に注意喚起のポスターが貼ってあった。線路内に落っことす事案が増えているらしい。自分で拾おうとして線路に人が降りるのを防ぐためだ。無線接続のため端末との相性もあり、場合によっては音が切れたりすることもある。音質については以前に比べだいぶ良くなったようだが、さすがに有線イヤホンに比べればやや劣るのはやむを得ない。とはいえ、耳に着けられる数グラムの極小ディバイスに、バッテリーとマイクとスピーカーと送受信機とアンテナと制御基板を仕込み、左右で同期させ無線で音楽が楽しめて、さらに雑音まで消してくれるとは……驚愕以外の何物でもない。技術の進歩を実感するためにTWSを購入しても損はないだろう。(BCN・道越一郎)