外国籍選手との対峙で放った輝き 槙野智章が「対人のスペシャリスト」として大成したワケ

外国籍選手との対峙で放った輝き 槙野智章が「対人のスペシャリスト」として大成したワケ

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名将ペトロヴィッチも称賛したフィジカル「パトリックを止められる日本人はマキしかいない」

退団が決まっている浦和の元日本代表DF槙野智章【写真:Getty Images】

外国籍選手との対峙で放った輝き 槙野智章が「対人のスペシャリスト」として大成したワケ

 J1浦和レッズの元日本代表DF槙野智章は、今季限りでの契約満了が発表されて退団が決まった。10シーズンにわたるプレーになった浦和では、特にアジアの戦いや外国籍選手とのバトルでチームにタイトルをもたらした。【写真】「この3ショットやばい」「さみしすぎる」の声! 槙野智章が公開“お祭り男”ショット&豪華3ショット 槙野はサンフレッチェ広島の下部組織からトップ昇格し、その後にドイツ1部ケルンへ移籍。広島時代の恩師ミハイロ・ペトロヴィッチ監督(現・北海道コンサドーレ札幌監督)が浦和に就任した2012年に、出場機会に苦しんでいたケルンからの期限付き移籍という形で浦和にやってきた。 広島時代に“ミシャ・サッカー”を経験し、先に浦和へ移籍していたMF柏木陽介が攻撃的な選手たち、槙野は守備的な選手たちに戦術理解を深めさせるための重要なキーマンにもなった。そして、シーズン最終戦の名古屋グランパス戦では、フリーキックをダイレクトの弾丸ミドルで蹴り込んで浦和をリーグ3位からのAFCチャンピオンズリーグ(ACL)出場に導いた。試合後には、独断での「完全移籍宣言」もして、翌シーズンから正真正銘の浦和の一員になった。 そして、このACLの舞台で槙野は輝きを発揮したと言えるだろう。この時期は中国勢が資金力をバックに、多くの有力選手を獲得して存在感を大きくしていた。当時のチーム名で広州恒大や上海上港にはブラジル代表やコロンビア代表など、南米からやってきたハイレベルな選手がずらりと並んだ。 そうした選手たちと丁々発止のやり合いを繰り広げ、槙野は対人のスペシャリストとしての名声を高めたと言えるだろう。国内でもガンバ大阪戦前に、ペトロヴィッチ監督から「パトリックを止められる日本人はマキしかいないだろう」という声を掛けられて発奮したこともあった。その集大成が、2017年にACL制覇を果たしたシーズンだった。

「自分がこうしていかなければいけないという方向展開ができた」

 グループステージと準決勝で上海上港と対戦し、MFオスカル、FWフッキ、FWエウケソンの強烈ブラジル人トリオを封じ込んだ。決勝では中東サウジアラビアの雄、アル・ヒラルとの肉弾戦も制した。特に、フッキを抑え込んだという実績は槙野にとって強烈な名刺になった。 その間には、当時のバヒド・ハリルホジッチ監督から高く評価され、日本代表の常連にもなって欧州遠征でベルギー代表FWロメル・ルカクともやりあった。そして、翌年にはロシア・ワールドカップのメンバー入りも果たし、第3戦のポーランド戦にも出場した。 槙野は契約満了後の記者会見で、こうした浦和でのプレーについても振り返っていた。「ペトロヴィッチ監督が僕をレッズに連れてきてくれて、ミシャの戦術で輝ける選手、ミシャのピースに合う選手ということで、求めるプレーを最大限発揮しました。ただ、時間とともに、自分はこうしていかなければならない、チームが勝つためにどうすべきかということを考えるようになっていきました。そのなかで、ザッケローニ監督やハリルホジッチ監督から日本代表に呼ばれ、どうしたら日本代表の選手であり続けられるのかということにシフトチェンジしてプレーを選択するようにもなりました。 前半の5年間、後半の5年間で僕のプレースタイルは変わりましたし、考えることも変わりました。そのなかでたくさんのタイトルを獲ったり、W杯に出場するという夢を叶えることができたのも、たくさんの監督の指導のおかげですし、自分がこうしていかなければいけないという方向展開ができたこともあったと思います。どういう監督の下でどういうプレーをしなければならないか、を考えながら過ごした10年間だったと思います」 攻撃参加を好むDFのイメージが強かった槙野だが、その真骨頂とも言えたのは対人の強さにあった。それがゴール前でのポジション取りにつながり、セットプレーからのゴールにも生かされた。浦和が初めてアジア制覇を果たした2007年は、DF田中マルクス闘莉王を中心にした強固な3バックがチームを支えた。そして、浦和にとって2回目になった17年のアジア制覇において、槙野は大きな役割を果たした。 名ディフェンダーの多い浦和のクラブ史上でも、対人のスペシャリストとして名を残したと言えるだろう。来季以降も現役続行することを基本線にしていている槙野だけに、その対人守備を浦和のアタッカー相手に見せる姿が来季に見られる可能性も十分にあるはずだ。

轡田哲朗 / Tetsuro Kutsuwada

最終更新:Football ZONE web